なぜ「動物占い」は流行るのか?

「動物占い」や「タイプ診断」のようなものが流行る理由の1つ、といいますか、根本を心理から読み解いてみましょう。これは、人間の悩みや生きづらさと関係していたりします。

人間には、アイデンティティの確立を求める欲求があります。専門的には「同一性」と言ったりしますが、それはアイデンティティの訳語です。

アイデンティティの確立とは、「私は何者か」ということであり、それは「私はこの世に存在している/存在してよい」というものと繋がっています。肉体として存在して、生命として生きているだけでは足りないんですね。

アイデンティティの確立は、「所属」によって満たされると言われています。それは「私は○○である」と言えることで、何らかの共通点のあるグループの一員であることです。

なので、「あなたは古代マヤ王国の貴族の血筋です」とか言われて喜んだりします。マヤ王国の貴族の血筋だとしても現代社会では何の特典もないのですが、それを知れて嬉しく感じるは、心理的には「アイデンティティの確立のプロセスを体験したから」ということになります。

「動物占い」や「タイプ診断」も同様の満足感を与えます。

「あなたは虎です」と言われて、「あたってるかも」と喜んでいますが、実は嬉しいのはあたっているからではないのです。虎は強そうだし、フクロウは賢そうだし、よほど外れていなければ、まあなんでもいいのです。だから氏名や生年月日のような、ころころ変わらないもので一意に決定する方がよいです。占うたびに結果が変わるというのでは、アイデンティティの確立はちょっと弱くなります。

「アダルトチルドレン」とか、「内向型」とか、「トランスジェンダー」とか、そういう言葉を見つけて救われたという人がたくさんいます。それもアイデンティティの確立です。生きづらさが動機となって、そういった言葉を探すのですが、言葉が見つかったときに楽になるのは、日常生活の問題が解決したからではなくて、アイデンティティの確立が起こるからです。ですので、その言葉を使って解決方法を探すこともできますが、解決方法を探さない人もいます。

それは「その言葉に救われました」とか「自分と同じような人たちがいると知ってほっとしました」というように表現されます。

その人の在り方へ深く関わっている場合は、「理解されそうな感じ」「理解されなくても大丈夫な感じ」が得られたりするでしょう。

心理の分野、ジェンダー/セクシャリティの分野には、アイデンティティの確立を促してくれそうなラベリング用語がたくさんあります。よくもわるくも、それを応用して集客する心理サービス業もあります。

さて、ジェンダーの分野ではこんなことが起きています。たとえば、「トランスジェンダー」という言葉に救われた人が、自分以外のトランスジェンダーと交流を始めます。そこで、多くのトランスジェンダーがホルモン治療をしていたとします。しかし、自分はホルモン治療していないし、したいとも思わない。しかしながら、アイデンティティの確立欲求が上回ると、本当はしたくないホルモン治療を始めるかもしれません。そうならなかった場合には、反動的に「トランスジェンダー」という言葉から離れたくなります。他の言葉を見つけても、同様のことが繰り返されるため、「自分をカテゴライズしてはいけない」と主張するようになります。

これは、「唯一無二の私自身でありたい」という、もう1つの欲求によります。「個の欲求」とでもいいましょうか。これもまた、「アイデンティティ確立の欲求」と同じく、自分の存在に関わります。これらの2つの欲求の間を往復するように揺れ動くということが起こります。

インターネットや書籍で、「アイデンティティ確立の欲求」を満たしそうな言葉を探します。一方で、交流会や友達との会話では、「個の欲求」を守るために「自分をカテゴライズなんかするなよ」と言ったり言われたりします。

楽に生きている人、マイノリティや生きづらさの性質をもちながらも、楽しんでいる(恨みに走らない)人は、ラベリング用語を気楽に適当に使っている(カテゴライズを禁止もしないし、固定もしない)という共通点があるように思います。自分は何者であるかについては、ある程度は無責任に主張するのがよろしいかと。

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