今回の映画は『おおかみこどもの雨と雪』です。
あらすじ
オオカミ人間(?)の父と人間の母の間に生まれた少女雪ちゃんと少年雨くんの成長の物語です。
みどころ:無条件の母性愛
今回紹介するみどころは1つだけです。
無条件に愛された経験が冒険を可能にする。
弟の少年雨くんに注目してみましょう。雨くんは成長の前半で大人しい気の弱い子供として描かれています。それが終盤の親離れのシーンでは逞しさが描かれます。この映画では、徐々に逞しくなっていくという安易なシナリオではなくて、ある象徴的なシーンを境にして変化するというメリハリある表現になっています。
先見的な精神科医・心理学者のフロムは、「愛するためには、愛された経験が必要」と言いました。フロムによると、愛の習得は、まず無条件に愛されること、次に自分を愛してくれる人を愛し返す(愛されるから愛する)、そして自分から愛する(愛をつくりだす)へと発達します。
現代の心理の研究では、さらに、この最初の段階、”無条件に愛される”という経験は心の中に”内なる安心基地”をつくるということが知られています。
”無条件に愛される”というのは、優秀でなくても、失敗しても、世間から悪者とされても、味方になってくれる存在があるということですが、そのベースが母親との愛着関係(赤ちゃんの頃に母子に生じる特別なつながり)によってつくられます。
昭和生まれの多くの人は「抱っこしすぎると自立できなくなる」説の影響を受けた育てられ方をしたせいか、愛着関係が昔よりも弱くなっているようです。ちなみに、この説は提唱者(アメリカの医師)が晩年に撤回しています。
愛着関係が十分に成功すると、その感覚というか、世界観というか、そういうものが深層心理に宿ります。(脳の機能発達やホルモンで説明する論者もいます)
そうすると、「人は助けてくれるものだ」とか「世界は自分の味方だ」というような世界観に生きることとなり、自然に人と助け合ったり、多少裏切られても立ち直りやすく、楽観能力を持つというようになります。それを”内なる安心基地”があると表現しています。
内なる安心基地を持った雨くんは逞しくなったというように、この映画を観てみてはいかがでしょうか。
その転機となる象徴的なシーンは・・・。(赤ちゃんのときではないですが)
オオカミ男の血をひく少年雨くんが、絵本を読んで「オオカミは悪者なんだ。殺されるんだ」と怯えます。そのときの母親の台詞に注目しましょう。
そして、そのシーンの前と後の雨くんの違いを観てみましょう。
では、本編をどうぞ。
参考リンク
心理セラピスト