また右脳派・左脳派の診断するお遊びが流行っているようですが、ちょっとご注意を。

人間は、物事をあるがままに観ることが難しく、思い込みを通して物事を見ています。眼や耳での「観察」と、知識や信念を使った「推測」をしているわけです。「観察+推測」を「観察」だと勘違いしていると、さまざまな問題が起きたり、発想力を狭めたりします。この勘違いを幻想と呼んでよいでしょう。心理学の「投影」も近い現象です。他人のことを不当に「あなたはこうだ」と判断、決めつけることにもつながります。推測してはいけないというよりは、推測だということを自覚できないときが問題です。逆に、これを逃れる能力を身につけると、問題を本質的に乗り越えたり、本当はどうしたいのか分かったり、発想力を高めたりできます。

頭の中にある知識や信念を使って決めつけることを戒めるために、「左脳に偏重しないようにしよう」と言われているのかもしれません。しかし、実はこの「右脳・左脳」という人の視方こそが、頭の中にある知識や信念を使って決めつけていることなのです。

「あー、この人はいま左脳を使っている」というのは幻想です。左脳は頭蓋骨の中にあり、観えません。左脳が活性化していることを表す音が観えたり、色が聴こえることもありません。測定装置でもつけない限り。

幻想の具体例

こんな話がよくあります。研修講師をしていると、演習を拒絶する受講者がいると。「なんで、こんなことしなきゃいけないんですか」「こんなことしたくありません」などなどと抵抗します。それに困った研修講師は「左脳偏重の受講者が理屈をこねて困るんです」と言います。しかし、そのような場合、その受講者は何か不安があるとか、何かに怒っているとか、情緒的に反発していることが多いです。ですので、その情緒をケアしてあげると、トラブルは収まります。情緒的に反発しているというのは、どちらかというと右脳的な機能です。なんとなく根拠なくその研修を嫌っているのも直感的で、どちらかというと右脳的です。「適当に参加しているふりをしよう」という方がよほど思考的です。声を荒げている人を見て、それを左脳偏重と言うのは、講師の幻想であったりします。

もう一つ、コーチや相談員が、涙を流しているクライアントに対して「あなたは左脳型だからねえ」と声をかけるのをみたこともあります。涙を流すのは感情の表れであり、どちらかというと右脳的な機能です。「左脳型」というのは、観察ではなく、相談員の頭の中にある知識が作り出した幻想です。

なんで幻想が発生するのか

上述の研修の例でいうと、講師の怖れ(研修が予定通りに進まないこと、評判が悪くなるなど)が関係していたりします。

相談員の例でいうと、セッションが相談員が使おうとしたメソッド通りに進まないときに、「解決しないのは、悪いのは自分ではない。クライアントに原因がある」と思うときに幻想が発生したりします。

怖れは幻想の原動力になります。

もう1つは、日ごろの恨みのようなものがある場合があります。なにか嫌なこと、憂えていることがあると、原因を特定したくなります。原因論の罠です。その原因を「世の人々が左脳ばかりつかっているからだ」という原因をつかんでしまうと、嫌なことが起きるたびにその原因論を適用したくなります。

原因論への依存とでもいうものが背景にあります。

とはいえ手ごわい

ですが、これを認めることは、人によってはとても困難です。幻想を見るには、単なる思い込みから、トラウマ的な深い経緯がある場合まで様々。それが幻想であることを知らされると強い拒絶反応があることもあります。

無理すると混乱することもあります。「そんなこと言ったら、何も判断できなくなるじゃないかーっ!」となったり。よーく分かったけど、なぜかつい「左脳型ですね」とか「あなたは絶対こうです」とか言ってしまうことから逃れられなかったり。

まずは「観えていることは何か?」と自問するだけでもよいかと思います。

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心理セラピスト Kojun(上野貢潤)
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