心の悩みの相談先、3つのセクター

厚生労働省が均一化を推し進めていますが、心の悩みの相談先は本来は多様です。

相談先を探したり、組み合わせるには、ここで述べる3つのセクターを意識すると見通しがよくなるかと思います。

ここに述べるのは私見ですが、医療文化人類学のArthur Kleinman[1]医療業界を民間セクター、専門職セクター、民俗セクターで説明したもの。を参考にしています。

ユーザー(素人)セクター
家族や友人などの意見やサポート。当事者グループや家族の会の集合知を含む。
ネットワーク環境の普及により、当事者や家族のリーチと情報スピードが急速に発達している。苦しみ抜いた当事者のホンネから生まれる良質な意見交換もある。
権威(専門職ギルド)セクター
bio-medicineの権威を借りて組織化されており、ロビー活動に強い。(医師免許、国家資格、心理学部出身)
政府からのお墨付きを得ており、盲目的な集客力がある。
オルタナティブ(在野)セクター
権威(専門職ギルド)セクターの組織や権力に組していない者。公的なお墨付きではなく、ユーザーが自分の目で選ぶ。
権威(専門職ギルド)セクターで上手くいかなかった人たちが来るので、なんらかの意味で”難しい”クライアントが多い。
伝統的/民俗的なものに限らず、巨大な専門職団体、資格制度に取り込まれていない心理カウンセラー、当事者支援団体スタッフもこちらに含む。ネイティブ・セラピスト[2]当事者として克服体験を通して心理セラピストになった人などは大学で心理学専攻していないことが多く、このセクターになります。私の師匠の1人も高卒です。
新しい手法や思想はこの在野で発生することが多く、のちに権威(専門職ギルド)セクターが取り入れることが多いようです。

各セクターのリスク

ユーザー(素人)セクター
素人判断は常識や社会規範に支配されていて、逆効果のアドバイスをしやすい(「気合で治る」「泣かないで」など)
すなわち、間違えやすい(荒い)
権威(専門職ギルド)セクター
強い政治力とキャンペーンをつかって世の常識を支配する。間違いが発生しやすい。(「LGBTQは病気だ」、「精神疾患は薬だけが治療法だ」「医師がお勧めする」など)
すなわち、社会まるごと騙されていることがある
オルタナティブ(在野)セクター
権力の後ろ盾がないので、経済的に厳しい。客の奪い合いが露骨で、協力連携が苦手。相互紹介が弱いので、騙したもの勝ちになりやすい。気休めや、インチキまがいのものも発生しやすい。
すなわち、個別に騙されることがある

オルタナティブセクターのインチキセミナーで数十万円とられた人もいますが、権威(専門職ギルド)セクターの保険医療で薬漬けになって人生の8年間を失っり、失業した人もいます。どっちらが深刻かしら。

日本の731部隊による人体実験は、アメリカ占領軍に資料を提供することを条件に東京裁判ですべて免責となってしまった。元731部隊員の多くは、戦後の日本医学界に復帰し、大学教授や厚生技官などとしてその影響力を温存した。

『精神医学の歴史』小俣和一郎(元上野メンタル・クリニック院長、精神医学史家)

はたして、元731部隊からオルタナティブ(在野)セクターに復帰した人はいるだろうか? 権威(専門職ギルド)セクターにしか行き場所はないように思います。

ユーザー(素人)セクターが一番大事

私が思うのは、ユーザー(素人)セクターが一番大事だということです。誰に相談するかを相談するところで、ここを大事にしておく必要があります。

相談する友達や家族がいないというのはとても不健全だと思います。商売としてではなく、情報交換ができる、助けてくれる人達があくまでベースだと思います。

あるいは、自分で支援者や相談先を選ぶのは失敗があるから、国が品質保証してほしいという意見は以前からありました。国家資格や国定施設ですね。自分で判断するということを放棄しないことをお勧めします。

国の制度に従った施設でも障がい者虐待や搾取が行われています。専門家よりも家族団体での対話から生まれる情報の質の方が高いことはよくあります。

このセクターのみぎ営利の力の外でありえることを忘れないでください。

パワーゲームがあると知ることが大事

各セクターの中に流派などがあり、それらは互いに商売敵として対立しています。セクター間にもパワーゲームがあると思ってよいでしょう。

パワーゲームがあるという前提で情報をみると、バランスよく心理支援システムを観ることができそうです。心理支援者もしょせんは人間であり、業界自体が心の病をもつと知ることが重要です。

いつの時代も、その時代の権威(専門職ギルド)セクターはその力をつかってオルタナティブ(在野)セクターの活躍を抑えようとします。中世ヨーロッパのキリスト教がガリレオガリレイの著書を発禁にしたように。たとえば、公認心理師という資格が最近できましたが、それは社会的地位のあがってきた臨床心理士の力を弱めて精神科医の地位を守るためにつくられたという説もあります。おそらく一面にはそれもあるでしょう。

(病院のカウンセラー募集には「将来独立を考えていないこと」が好ましいと書かれていたりします)

権威(専門職ギルド)セクターもオルタナティブ(在野)セクターも商売だということを忘れないでください。

ユーザー(素人)セクターが情報や意見をもちよることが大事です。

ちなみに私は…

Kojunは専門職寄りのオルタナティブ。オルタナティブに属しますが、使っている技法は権威(専門職ギルド)セクターの臨床心理学の用語を使って説明することは可能です。

日本の精神医療は薬物療法が中心だったため、数年前までは心理セラピー(心理療法)はオルタナティブ(在野)で主に行われていました。それが最近は医療機関が心理療法だの言い出したので、私たち在野サイコセラピストの立ち位置がブラックジャックちゃんになってしまったのです。

昔は医療なしで子供を産んでいましたが、助産師が産婦人科に組み込まれたみたいなものですね。そのうち自信のなくて悩む人も「自己肯定感欠如症」とかの疾患名がついて医療の市場になるかも。

参考:
『日本のありふれた心理療法』東畑開人
医療における現実の多元性と多層性――アーサー・クラインマンの現象学的・解釈学的医療人類学――梶谷真司
『精神医学の歴史』小俣和一郎
『行ってもイイ精神科、ダメな精神科』ひろ新子(これもユーザーセクター)

脚注[+]

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