「恐れ」と「怖れ」

このブログで度々触れているテーマですが、「恐れ」と「怖れ」の違いをまとめておきます。

多くの人は、恐がることは弱さだと思っています。そして、恐がらないように努力すると強くなると思い込んでいます。ですが、事実はそうでもありません。

正式な定義ではなく、ここだけの言葉の使い分けですが、心の悩みの解決に挑む方は、これら2つが全く違うということを知っておいてください。

恐れネガティブ感情(人がそれを避けるように行動する感情)の1つで、生き延びるために備わっているもの。
怖れ「恐れ」や「悲しみ」などの感情を隠そうとする心理現象。ネガティブ感情を人に悟られたくない、もしくは自分が感じたくないために、それを抑圧すること。たとえば、「恐がっていることがバレることを怖がる」ということ。

ちゃんと恐がることができないと、怖れを生じて、人間関係のトラブルを招いたり、心理課題の解決を妨げが起こります。

セラピストがプロセス誘導の際に「感情を解放しましょう」と言うのは、「恐れ」のことです。「怖れずに恐れてください」ということ。(だだし、上手くやらないと危険なので、独りでの挑戦はほどほどに)

具体例1

バンドメンバーの一人が、ステージ前に「オレ、全然緊張していない」と言っていました。そして、演奏中に彼だけが大失敗し、それを立て直すこともできませんでした(実話)。本当は緊張しているのに、それをないことにしたので、これは「怖れ」です。抑圧した緊張が暴走し、大きな失敗を招きました。

他のメンバーは、「うぁー、緊張するわぁ」と言い合っていました。そして、大きな失敗はありませんでした。多少しくじっても、それは瞬間的なものでしかありませんでした。これは、緊張という「恐れ」を否定しなかったので、「怖れ」ではありません。

具体例2

『笑っていいとも』を30年間続けたタモリ氏は、それでも毎回本番前に緊張すると言っていました。緊張という「恐れ」を否定しなかったので、「怖れ」ではありません。タモリ氏は毎日ステージに立つことができました。
一方で、人前で話せないあがり症の人は「緊張することは悪いことだ」と思っていて、「緊張しないこと」を目指しています。これは「怖れ」です。(「怖れ」だと気づいても、自力でそれを解けるとは限りませんが)

具体例3

ある社長は、ビジネス上のトラブルに巻き込まれ、関係相手を叩きのめすと言っています。トラブルによって、どんな損失や恥を心配しているのか(「恐れ」)を認めることができれば、解決策を考えることができます。恐がることは弱いことだと思い込んでいるために、その「恐れ」を認めることができず(「怖れ」)、関係相手を叩きのめすという利にも解決にもならないことへエネルギーを注ぎ続けます。

もし、この記事を読んで、不快感をもったならば、自分が何を恐れているか感じ取ってみてください。自分は何も恐れていないが、この記事がけしからんと思うのであれば、それが「怖れ」です。

参考

※当サイトの記事には実践経験に基づく意見や独自の経験的枠組みが含まれます。また、全てのケースに当てはまるものではありません。ご自身の判断と責任においてご活用ください。

※当サイトの事例等は事実に基づいてはいますが複数のケースや情報を参考に一般化して再構成、フィクション化した説明目的の仮想事例です。

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