台湾の人々は親日です。私と友人が台湾でタクシーに乗っていると、運転手さん、ご機嫌です。ところで、道路のセンターラインやガードレールが日本のものと同じです。建物の少ない郊外の山道を走ると、まるで日本にいるようです。
私たちが「わー、日本の道路とよく似ている!」と言うと、タクシーの運転手が言いました。
「そりゃそうだろ! 日本統治時代に日本人が作ったんだから!」
この話を聞いたA氏は、「そんな言い方するんだぁ。日本人って恨まれているんだね」と言いました。
台湾人(少なくともその運転手)は、日本人が道路などのインフラを整備してくれたことを喜んでいるのです。日本人客へのご機嫌取りも多少あって、「日本人が作ったんだから」と言ってくれたわけです。
たしかに、運転手の台詞は、どうとでも解釈できます。「お前らの国が侵略したんだ。お前らは加害者だ」ともとれるし、「日本のテクノロジーばんざーい」みたいなお世辞ともとれるわけです。
台湾旅行は楽しかったよ、親日だったよという文脈で語っても、ネガティブに解釈する人はいます。意識的にではなくて、無意識的にそうなるんですね。
そのA氏に、外国人女性の知人の写真をみせました。肌の色は褐色で可愛らしい顔です。A氏のコメントは、「おおー、ごっつい体つきだなあ。こわそう」でした。その写真には肩から上しか写っていなかったので体つきは想像です。外国人であること、肌の色が濃ゆいことから、大柄だと無意識に想像したわけです。本人は、それが自分の想像であることに気づいていません。
私たちが見ている世界の大半は無意識の想像が創り出しています。
A氏の生活はやはり、なんとなく悲壮感のある感じでした。やはり、自分を幸せにする世界観、深層心理を持ちたいものです。
そして、ここがいつも伝えている重要ポイントなのですが、A氏のような人をダメな人として見下すと、自分も同じ心の罠にはまるということです。なぜならば、人を見下すということは、「自分はそうではない」と思うことでもあるので、自分の心の罠に気づくことが出来なくなってしまうのです。ですので、自分にもどの程度にか、同じことが起きているということを認める必要があります。
いつも、ネガティブな感情を否定・抑圧しないことをお勧めしている私が、今回はポジティブ思考みたいなことを書いていて、ちょっと意外に思われるかもしれません。
自分はA氏みたいにならないぞ! と思ってほしいのではありません。自分もA氏のようなときがあるかもしれない。そのときは、その事実を受容れようと思っていただくことをお勧めしたいのです。
心の闇は、それを否定すると増えます。心の闇は、それをあるがままに認めると減ってゆきます。
ポジティブ思考ではありません。あるがまま観察です。