心理的な「統合」ということ

人間関係や社会生活の中で、とても傷つく体験、絶望などに対して、どのように対処すればよいのでしょうか?

それは医学的な疾患とは別の、傷つき、座礁として出会います。

その解決プロセスについて、深層心理セラピーでは「統合」という言葉が使われます。

それは分裂という心の病、もしくは分裂という未成熟を解消するというような意味で解説されます。ですが、それは分析者の視点です。

本人の視点では、相反する2つのものが1つになるような体験となります。

そこでまず、相反する2つのものが発見される必要があります。

たとえば、失敗をしてしまう自分が苦しいとき。失敗というのは、不用意なことを言って他人を怒らせてしまったとか、調子に乗って嫌われたとか、詰めが甘かったとか、いろいろなパターンがあります。

失敗の損害が痛手だというのではなくて、自分が嫌になるというような場合です。それは、失敗した一過性の痛みではなく、今後も同じ苦しみが続く人生への恐怖なのだと思います。

その場合の相反する2つは、失敗する自分を許さないという1つと、失敗しても平気になるというもう1つだったりします。

おそらくこの人は、失敗しないように頑張ってきた時期と、失敗しても気にしないように頑張ってきた時期があるでしょう。

失敗しないように頑張って失敗を避けられることもあったでしょう。失敗しても気にしないことで楽になったこともあったでしょう。

しかし、ある種の失敗に出会ったときに深刻な生き辛さを感じるのです。いくら頑張っても幸せに生きてゆけない感じがするのです。

では、心理セラピーでよく言われる、統合されるというのはどういうことでしょうか?

失敗を許すけれども、気にもするっていうことかもしれません。

起きてしまったことは「まあ、いっか」。これからについては「どうすれば失敗しにくいかな」。

今後起きてしまう失敗についても「まあ、いっか」。でも、失敗しない工夫は適度に実践する。

それはこれまで自分を守ってきた、「許さない」戦略にも「気にしない」戦略にも反します。ですから、統合はとても苦悩を伴うのです。

その苦悩が今後も繰り返されるという不安が、生きづらさだったりします。

統合が達成されたときの状態は、「良い意味での反省」ができる心の状態とでもいいますか。

ただ、心理セラピーで統合を目指すことは、「良い意味で反省してください」と促すことではありません。自然とそうなる状態を作り出すことです。

失敗体験が胸に突き刺さり、生きづらさを感じている人に説教をしても、助けになりません。

だから「統合しましょう」とは言いません。「統合が起きましたね」とは言うかもしれません。

クライアントが自ら「許さなくてもいい気がしてきました」「気にすることが苦しくなくなりました」と言うようになります。

このように相反する2つモードの統合として説明すると、加減とか妥協のことだと誤解されます。ですが、それは違います。

実際に体験するまで分かりませんが、それはそんな中途半端なものではなくて、それまで思いもよらなかった考えが可能になる状態です。

両端からの綱引きの妥協点というよりは、両極端が必要なくなることが本質です。

怖れの支配から開放されて、様々なことが可能になるのです。

その苦悩が実は統合であり、これから幸せになってゆくための苦悩であることを知ると、それは生きづらさではなくなってくるかもしれません。それが統合です。

挑戦しないで引きこもることと、感覚麻痺させて突き進むことも、相反する2つです。

ひきこもりの人と、我慢しすぎて過労死する人は、同じような人なのかもしれません。

逃げることと、突撃すること、ですね。逃げるボタンと突撃するボタンが両方ともあるコントローラーを持つと、いろんな技が繰り出せるようになるでしょう。

逃げ腰で戦うとかって、苦悩になりやすいですよね。なぜならそれは統合を要求するからでしょう。

死ぬこと(死んだように生きること)と、生きることも。

死に損ないで生きることに罪はなしとなったとき、道端の花を見て喜べるのかもしれません。道端の花を見て喜べたら、出会いや機会が見えて来るかもしれません。

死に損ないでしか通過できないダンジョンもあるのです。

メリットとデメリットを交互に考えても決断はできませんが、メリットとデメリットが統合すると決断ができます。

費用がかかるというデメリットと、美味しいものを食べるというメリット。美味しいものにお金をかける喜びという統合や、美味しいものを食べるよりも大切なものを知るという統合があれば、決断はしやすいでしょう。

あなたが苦悩しているとしたら、AかBかとう分裂に落ちいているかもしれません。それは何と何でしょうか?

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