心理セラピストの探し方のヒント 集中-多元 編

カウンセリングルームのイメージ

今回は習得しているアプローチが集中しているか多元的かという視点で、心理セラピストを類型化してみようと思います。得意とする相談テーマについてはここでは扱いませんので、実際にはこんなに単純ではありませんが、ざっくり心理セラピスト選びの参考になればと思います。

こんなふうに類型化してみた

オリエンテーション集中型特定の1つの流派の上級やベテランを目指す。
多元的/統合型11つの技法を主軸として、他の技法をいくつか追加。
多元的/統合型2テーマに沿って、たくさんの技法を学ぶ。
傾聴&コンシェルジェとにかく話しやすい。必要に応じて、他を紹介してくれる。

まあ、分類ではなくて類型なので、実際のセラピストはどれに近いか、どれとどれの中間か、というようになるかと思います。

オリエンテーション集中型

これは「精神分析」とか、「認知行動療法」とか、「○○療法セラピスト」のようなオリエンテーションやメソッドを長期間かけて学ぶスタイルです。「学派」と言ってもよいかもしれません。

精神分析の中にもユング派やクライン派などありますが、相談者としてはそこまで細かく区別しなくてもよいかと思います。

認知行動療法は複数のメソッドを含みますので、それ自体が統合/多元的のようなスタイルではありますが、マニュアル化+エビデンス+協働実験(クライアントと試す)というような枠組みが一つのオリエンテーションかと思います。また、認知行動療法の中でも、特定のメソッド(○○療法)の上級認定を目指す人などは、オリエンテーション集中型と捉えてよいかと思います。

つまり、相談者からみた特徴は、心理セラピストを選んだ時点でアプローチがほぼ決まるということです。

ただ、これらのセラピストでも、他の学派のことを全く知らないということは減ってきているようです。昔の学派争いの時代の文献を読むと、お互いを全く理解しない様子でしたが、最近の文献ではそうでもないです。

多元的/統合型

複数のメソッドを組み合わせることを良しとするスタイルです。

人間性心理学の傾聴・共感カウンセリングを基盤にして、精神分析や認知行動療法から知見を取り入れるセラピストが多いように思います。

また、上述のように認知行動療法(第2世代)を主軸にして、認知行動療法(第3世代)や他のメソッドを追加してゆくセラピストもいます。

多元的/統合型1は、1つだけ(多くの場合、最初に学んだメソッド)だけ中・上級くらいまで学び主軸にします。主軸ありきの多元的アプローチは、その統合されかたがセラピストの個性となります。

多元的/統合型2は、特定メソッド(○○療法)の初・中級の研修を複数受けてゆきます。クライアント目線で技法を探しているセラピストかもしれません。なにか主要なテーマがあり、そのテーマの重要課題に沿ってメソッドを集めている可能性があります。そのテーマや重要課題が自分のニーズと合えばよいですね。

いずれにしても、様々なメソッドの間には共通要素がありますので、2~3のメソッドを学んでいれば、点が面になっているかもしれません。また、2倍のメソッド数を習得しても能力が2倍になるわけでもありません。

傾聴&コンシェルジェ型

これは心理セラピストというよりも、「カウンセラー」のイメージに近いかもしれません。傾聴カウンセリングのオリエンテーション集中型と言えなくもないですが。産業カウンセリング、児童発達、障害者支援、医療など、オリエンテーションとは別の軸で専門性や特徴を持っている場合があります。気持ちの整理と相談といった感じで、他の社会資源の紹介が得意である場合もあります。

最近の傾向

最近の傾向としては、心理職も学ぶべきことが増えているので、一生かけて学派に帰依するなんてことは難しくなっていて、オリエンテーション集中型は減っているのではないかと思います。アンケート調査でも殆どの心理士が「多元的」と答えているとか聞いたことがあります。

それだけに、ひとつの視点で深く長く探求してきたオリエンテーション集中型のセラピストは希少かもしれません。

メソッド習得の時代的変遷

時代順では次のようなトレンドになっているように感じます。

師事した先生の学派に帰依

(学派争いに巻き込まれる)

学派からメソッドへ

各メソッドが資格認定制度を作り、多額の受講料を払って上級○○セラピストを目指す

(民間の資格ビジネスに似ている!?)

たくさんのメソッドの習得を目指す

メソッドの数は増え続けることに気づく

少数のメソッドを組み合わせる、あるいは高額な「上級認定」に拘らない

これから高額すぎない講座も増えて来る!?

相談者として知っておいたほうがよいのは、上級認定者というのは、優秀だから上級になったというよりは、そのメソッドに多くのお金(50~100万円くらい)を出して学んだという意味であることもあるということです。(大抵は誰でも受験できる認定試験ではなく、認定する組織と養成講座を提供する組織が同一)

そして、多元的/統合的アプローチというのは、メソッドの数を増やすという趣旨ではなく、なんらかのテーマや方向性(セラピスト独自のオリエンテーション!?)に沿って、あるいは多様なクライアントをカバーするためのポートフォリオとして設計されるものだと思います。

Kojunはどのあたりか

アダルトチルドレン/発達トラウマに関しては、多元的/統合型の1のように、TA・ゲシュタルト療法の影響が主軸にして、その現代版ともいえるEFTをはじめ、様々な要素が加わっています。その主軸は、「人生の宿題を扱う」というテーマにぴったりだからです。

ですが、ショックトラウマに関しては、多元的/統合型2のように、どれが主軸というわけでもありません。最初にバウンダリーの修復(「No」と言う力)のセラピーを学んだのですが、相談者のニーズに合わせてそれ以外もやっていきたいと思っています。「心の自由」というテーマには、暴露、身体性、バウンダリー、認知、神経系など、あらゆることを試してゆく必要があるからです。

また、「○○療法」のようなパッケージを多く学ぶつもりはありませんが、「○○技法」のような要素技術を集めることはしています。様々な技法を使いますが、「○○セラピスト」の肩書は集めていません。

今回も私見に基づいた情報提供ですが、参考になりましたでしょうか。

参考

※当サイトの記事には独自の意見や枠組みが含まれます。また、全てのケースに当てはまるものでもありません。ご自身の判断と責任においてご活用ください。
※当サイトの事例は原則として複数の情報を参考に一般化/再構成した仮想事例です。
※学術的な訳語として「療法」「治療」という言葉が出てきますが、本サイトの心理セラピーは心理支援であり日本の法律における医療行為ではありません。

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