【心理セラピストの映画紹介】『秘密の花園』

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映画は人の成長や克服を描いています。心理セラピー(心理療法)もまた、そのプロセスを短時間/短期間で支援するものです。従いまして、よく似ています。

癒しの体験を求めて、心理セラピストと一緒に映画を観てみましょう。

今回の映画は『秘密の花園』です。原作は児童文学です。


あらすじ

孤児となった少女メアリーが、”おじ様”の屋敷に引き取られる。おじ様は妻をなくして、心を閉ざしている。メアリーはおじ様の妻(叔母)の花園をみつける。

[視聴]

みどころ1: 泣き方を知らない少女

主人公のメアリーは「私は強いのよ」という心理的態度を身につけています。それは、心理療法家の間で《強くなくてはならない》ドライバーとして知られてるものです。強がるスイッチが入りっぱなし状態で、大人になっても続けていると人生の何かが磨り減ってゆくもの、とお考えください。

「強そうな人が実は繊細だった」という人間経験をお持ちの方には、序盤のメアリーのツンデレがいとおしく楽しめるでしょう。

強がるドライバーは応援したくなるので、それだけでもドラマ作品になります。

しかし、現実世界では、強がるドライバーを強めても、幸せになりにくいというのが心理療法の教えるところです。この名作では、どのように扱われているでしょうか。

はたして、「必要以上に強がる」が解消されてゆくかどうか。そして、どのように?

頑固・命令口調であっても、”強がり”から”優しさ”へと変化するかどうか、観てみましょう。

冒頭のナレーションをよく聴いておいてください。

「私は泣き方を知らない」と言っています。
そして、ほんとうは何が欲しかったのか、宣言されています。

この映画のテーマが《強くなくてはならない》ドライバーであることが宣言され、「ほんとうは欲しかった○○が手に入るかご覧あれ」と言っています。心理療法の視点では、それが手に入れば、必要以上な「強がりっぱなし」が必要がなくなります。

ラストシーンで、改めてご確認ください。

序盤では、使用人マーサと会って、さっそく泣いてしまいます。泣いた理由は、インド人がどうのと言っていますが、たぶんそれはどうでもよくて、強がらなくていい相手(力で支配しなくても味方になってくれそうな人)に出会ってしまったという反応です。セラピーの始まりです。

「泣き方を知らない」と設定しておきながら、さっそく泣いていますが、泣き方を知らないからこのような泣き方になるのだなと観てください。これが自然な泣き方に思える方は、メアリーと同じ状態なのかもしれません。

みどころ2: おじ様の心模様

おじ様は、喪失(妻を亡くして、幸せを拒絶している)という問題をかかえていますが、おじ様の心については、なぜか間接的に表現されています。

次の3つを観てください。

メイド長メードロック:
「部屋から出てはいけません」など、否定・怖れ・消極性をもって物語の進行に抵抗します。この人は1人の人物というよりは、おじ様の心の一部を表現しているようです。
ロングショットの馬車:
おじ様は頻繁に留守になります。仕事のためでもなさそう。
犬達:
おじ様の留守中にはさっぱり現れない、おじ様と同時にしか登場しない犬達。犬は何を近づけないようにしているのでしょうか。

危機・外敵への原始的な反応であるFreeze(固まる)、Flight(逃げる)、Fight(威嚇する)を漏れなく表現しています。それほど、幸せが恐いわけです。

「春から逃げる」という詩的なナレーションで、念押ししています。

台所で唄われる「グリーンスリーブス」の歌詞が、喪失のセラピーが進んだことを表しています。ミュージカル映画ではないのに合唱という違和感を出して、ここが見所であることを主張しています。序盤では歌詞なくメロディーだけ出てくるのですが、それはセラピーが進むことが必要であることを示唆しています。歌詞が唄われたこということは、「ぼく達を残して死んでしまうなんて、ひどいよ」と気持を言えたということです。ちょっと難しいですね。とにかく、この歌が唄われた、なんかブレークスルーしたんだなと思ってください。

みどころ3: 抑圧されたもの(フェルトセンスとカタルシス)

叔母(おじ様の妻)の死ととも封印された”秘密の花園”は、抑圧されたものがあることを示唆しています。隠されていて、鍵がかかっていて、番人がいる、まさに抑圧された心です。

メアリーが鍵を見つけたことで、「この物語は抑圧の解放を描きますよ」と予告しています。

「開けちゃダメ、開けてしまったら、秘密じゃなくなるもの」という台詞が変なタイミングで出てきます。そう、セラピーは邪魔が入らない場所で行います。

コマドリの役割は、カウンセラーがフェルトセンスと呼ぶもので、いわゆるモヤモヤなどの心の微かなサインです。コマドリを追うシーンは、フェルトセンスに気づいて辿るデリケートなプロセスを表しています。強がりドライバーを一時停止しなければ、できない作業です。

メアリーは、コマドリに対して、命令口調ではなく、素直に道案内をお願いすることができるでしょうか。

この映画のすごいところは、発見した花園が荒廃していることです。華やかな花園ではないのに、それを見つけたときの嬉しさ、愛おしさが伝わります。心理セラピーで心の奥底の”ありのまま”に触れたときに、よく似ています。

よく分からない? 失踪していた自分の子供(または愛する人)が帰ってきた(発見された)と想像してください。そのときその子(その人)は疲れ果てボロボロになっていた。あなたは残念? 複雑? ただ嬉しい?

心理ワークしていると、やがて深い感情が出てきます。カタルシスです。

映画の中の、”扉を開ける”、”土に触れる”、というような能動的な作業は、心理ワークに相当します。それに引き続いて、受動的/自動的な現象としてカタルシスが起きます。

抑圧の解放がはじまったこと(カタルシス)は、この名作では、どのように表現されているでしょうか?

カタルシス経験のある人は、そのシーンに、身に覚えを感じるでしょう。

みどころ4: 回避性の克服

ベッドで寝たきりのコリン少年が、母親の肖像画をカーテンで隠しています。その理由を話しますので聞き逃さないよう。

これを回避性といいます。簡単に言うと、愛を欲しがらないと決めた態度です。「欲しがらなければ、得られないという苦悩がない」、「手に入れなければ、失う苦悩がない」、つまり、愛を怖れます。

ちなみに、この傾向を持つ人は、日本国内でも非常な勢いで増えています。(ex.求婚されると冷める)

終盤にもう一度、肖像画が出てきますので、コリン少年(もしかするとおじ様?)の内面に起きている変化を読みとってください。

くどいようですが、メアリーが欲しかったものは何でしょうか?

では、本編再生どうぞ。 [視聴]

ある名作映画は、一生涯にわたり解決されないことが多いような、人生の問題をテーマ設定し、それが奇跡的または理想的に解決される様子を描きます。

一生涯解決しない人々が多い一方で、それらの問題は多くの人が共通に経験してきたものであり、心理療法(心理セラピー)の現場で繰り返し扱われ、長年にわたり研究され、解決方法が知られています。

【あなたの癒しのためのワーク】

 メアリーが最後のシーンで走ります。追いかけて捕まえてください。

【参考リンク】

原作に関する解説→OLDIES 三丁目のブログさんの記事

 
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心理療法セラピスト 上野貢潤

心理療法セラピスト 上野貢潤

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