【「フクロウの眼」物語】――野性の知性と科学の視座

ボトムアップの心理セラピー

Kojunの心理セラピーは「本当に変わるんだあ」と驚かれる深層アプローチです。思考からアプローチする認知療法がトップダウンと呼ばれるのに対して、身体や感情からアプローチするボトムアップを中心としています。

ただこれは、マニュアル化しにくい心理セラピーです。身体へのアプローチはセラピスト自身が実践していて、さらに非言語の誘導も含めてクライアントに伝える必要があります。また、感情へのアプローチはセラピストの生き様に大きく左右されます。なので、大学のカリキュラムなどよりも、自然淘汰的/自然発生的ににセラピストが生まれる環境の方から育ってくるもののように思います。

Kojunは感情へアプローチする心理セラピーを習得しました。

身体はクライアントに対してはあまりやっていなかったのですが、トラウマの勉強をしていくうちに、自分が無意識に身体性アプローチを実践してきていたことに気づきました。

これらのボトムアップは言葉で説明できない、つまり心理学において「科学的でない」と言われてきた直感・直観、すなわち暗黙知を使います。この暗黙知は近年の計算論的な脳神経科学の言葉で表現できるようになってきました。Kojunは体験的な暗黙知と、それを俯瞰する脳神経科学/情報科学の言葉を使います。

本人中心アプローチのルーツ

20代の後半頃、社長さんたちからコンサルタントと呼ばれていました。よく経営者は孤独と言われますが、社長や管理職たちから呼び出されて、悩みや葛藤の相談相手にされていました。彼らはKojunよりも年上で経験豊富ですから、クライアントの方が知識も地位も上なのです。意思決定の責任を負っていますから、Kojunが「こうしましょう」と言って結論がでることはありません。たいした意見も言えないのに、「君と話していると迷いが無くなるわ」となってもらうわけです。これは、必然的にクライアント中心療法(カウンセリングの基礎)というものと同じスタイルになります。

カウンセリング実習を数百~数千時間にわたり叩き込まれたわけですが、Kojunにカウンセリングを教えたのはクライアント。心理学やカウンセリングの先生ではなく、葛藤のプロであるクライアントから叩き込まれたのです。頷くタイミング、沈黙の使い方、意見の言い方、押され方など、彼らの悩みが消えるまで、すべて教えてくれました。クライアント中心療法ですから、当たり前です。むしろ、大学や先生などの権威から習う方がヘンじゃないですか? しかし、「専門家から習っていないから、それはクライアント中心療法ではない」と言うのが学歴主義の心理業界の不思議なところです。(ちなみに、後々に心理セラピストになるときに、訓練の一環として改めて傾聴などの研修には参加しています)

また、「クライアント中心療法(client centered therapy)」は普通は「来談者中心療法」と翻訳されますが、あの頃のKojunの場合はクライアントが来談するのではなく、クライアントに呼び出されていましたから、クライアントは「来談者」ではありません。「来談者中心」って・・・・臨床心理学は不気味な言葉でいっぱいです。

ともかく、これがKojunの本人中心アプローチの一つのルーツです。導かないけど、解決しないと終わらないので、「知ったことではない」わけでもないです。

脳科学・AIとの再会

Kojunは子どもの頃から「なぜ人は怒鳴るのだらうか、なぜ虐めるのだろうか、なぜ攻撃するのだろうか」と悩んでいました。

学生時代は理系で、ニューラルネットワークや認知科学(脳科学やAIの基礎)を学んでいます。その目的は、「人類が自他を傷つけなくなるため」でした。

紆余曲折しながら、先に述べたコンサル業、業務改革、組織間対立の調整、学習支援など、不必要な心理的苦痛を無くすための仕事をしてきましたが、理性や意識以外の何かが問題の根底にあることに気づきました。

そこから心理セラピーにたどり着きました。認知行動療法もやりましたが、たどり着いたのは心理療法の中でも科学というよりは哲学的な、ハウツーよりもプレゼンスや関係性を重視する、人間性心理学や実存主義セラピーでした。会っただけでホッとした人が泣き崩れて回復が始まる、気づけばそんな世界にいました。

人間性心理学はどちらかというと心理療法の中では弱い勢力で、主流である科学主義や権威主義から叩かれていました。

また、心理職業界は「心理学は科学だ」と言いながら、理学部出身の私たちを「他分野」として職場から追い出していました。心理学者のいう「科学」は物理・化学・情報科学のことではなく、心理学統計だけを指していました。

ところがfMRIの発明が脳神経科学を急発展させ、情報科学と融合することで、人間の無意識を解明し始めています。Kojunが子どもの頃にいだいた疑問も殆ど解明されています。私たちの心の殆どが無意識プロセスだということ、直感とか体験知と呼ばれていたものが実在することが解り、意味ベクトル、マトリクス、価値関数など数学の言葉で語れるようになりました。

臨床心理学の権威主義が他分野出身者を排除している間に、認知科学(情報科学)は心理学を取り入れていました。

臨床心理学の科学主義が「測定できるもの」に固執している間に、脳科学と情報科学は「測定できないもの」を語る言葉を科学的に積み上げていました。

いまや、感情焦点化療法やトラウマ特化セラピーの教科書にも「情報処理」という言葉が出てきます。

たどり着いた人間性心理学・実存主義と、古巣である自然科学・情報科学が、やっと再開しました。

参考

※当サイトの記事には独自の意見や枠組みが含まれます。また、全てのケースに当てはまるものでもありません。ご自身の判断と責任においてご活用ください。
※当サイトの事例は原則として複数の情報を参考に一般化/再構成した仮想事例です。
※学術的な訳語として「療法」「治療」という言葉が出てきますが、本サイトの心理セラピーは心理支援であり日本の法律における医療行為ではありません。

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