正論で解決しない悩みにはゲシュタルト療法の「図地反転」

正論のアドバイスでは解決しない心の悩みには、直感を使った心理セラピーが使える場合があります。

ゲシュタルト療法の「図地反転」について、その具体的なイメージを書いてみます。(権威の引用ではなく私見です)

ゲシュタルト療法はイメージワークっぽくやることが多いのですが、それでは文章で表現しにくいので、ここではあえて一般的なカウンセリングや相談のイメージで説明してみます。

ゲシュタルト心理学の図地反転

まずは言葉の説明を簡単に済ませます。

ゲシュタルト心理学の「図地反転」というは、ルビンの壺(次の図)のように、見え方が反転することです。

これが壺に見えたり、向き合う二人の顔に見えたりですね。

転じて、ゲシュタルト療法の流れをくむ心理セラピーでは、物事の見方、世界観、解釈などの劇的な変化の意味で使われます。

単純なところでは、「コップに半分しか水がない」と「コップに半分の水がある」なんてのも図値反転てすね。高度なものとしては、ポストトラウマ成長なんかも図地反転が含まれます。

そして、「ゲシュタルト」とは「部品それぞれを観るのではなく、全体から観えるもの」みたいな意味です。

相談事例にみる図地反転

有名なカニッツァの三角形(の単純化したもの)を喩に使いましょう。

クライアントさんが話す悩みが、3つの要素「収入」「孤独」「不安」から成っていたとします。

要素主義の場合

まず、構成要素をそれぞれに観る要素主義の世界観を描いてみます。こんな感じでクライアントの悩みを見立てます。

そして、「収入がない」に対して就労支援、「孤独」に対して居場所の紹介、「不安」に対して認知療法などというように、悩みを要素に分解して解決するスタイルが考えられます。

ゲシュタルト視点の場合

ゲシュタルト療法的な世界観を描いてみます。ただし、技法的なことを省いて。

このように3つのパックマンを同時に、その配置も含めて眺めます。

そうすると、全体を眺めることでしか見えない三角形、すなわちゲシュタルトが見えてきます。

「そんな僕」がゲシュタルトですね。


これが「図地反転」のイメージです。

で、「そんな僕がいるなあ・・・」と眺めると、なにかが起こります。

「そんな僕がいるなあ・・・」
  ↓
「そんな僕は・・・愛を求めているんだ!」
  ↓
「よし、逆に人を愛してみよう」
  ↓
「できるだろうか?」
  ↓
「できる!」

まあ、これは一例ですが。意外な発想が、癒しや行動力を伴って出てきたりします。支援者の立場でいえば、縦割りとは異なる本当に必要な支援が見えてくるということになります。

 
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最近は公的な相談窓口などで専門機関との「連携」という言葉が強調されています。しかし、相談する側の当事者はこの「連携」を昔から言われていた「たらい回し」の現代版というように感じていたりします。「うちでは対応できません」だけではなくて、別機関を紹介してくれたり、付き添ってくれたりもするようになったので冷たくはなくなったのですが、当事者が前に進めない感じは変わっていなかったりもします。それは、要素還元アプローチにみたように、「頭痛は医療機関、収入は就労支援、当面のお金は給付金制度」というように分解してあちこち紹介するのが連携だと思われているからです。相談者が扱ってほしいのはゲシュタルトなのに、それを無視して分解するもんだから、一次相談窓口の意味がなくなってしまうんですね。

外の資源に繋げるソーシャルワークをしてしまって、内なるものと繋がりを切ってしまうわけです。相談機関のマネージャーはカウンセリングは外の資源の一つだと思っていることが多いようです。

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地に隠されしもの

深い悩みの場合は、精神分析でいうところの抑圧されていた思考や感情が、Kojun用語だと「隠されしもの(the hidden)」が出てくるわけですから、ものすごく心が揺れるわけです。

カウンセリング中にも、感情があふれて涙や嗚咽やもがき声などが出てくるクライアントもいます。カタルシスなんていう気持ちいい感じもありますし、ハードな感じになるときもあります。たとえば、親を怨みながら生きてきた人が、「愛されたかった」とか言い出したりする(これも図地反転)のですから、男性クライアントならわなわなして鉄パイプを曲げてしまいそうなくらいの反応が出ることもあります。

人は自分で真実をみつけたときのみ、真実に耐えられる

(ゲシュタルト療法の創始者 F.パールズ)

パールズによると、自分で見つけたときのみ耐えられるわけですから、このワークはクライアント自身に行っていただく必要があります。

そしてそのゲシュタルトを観るために、先のブログ記事で書いたようなクライアントの「いまここ」体験のワークが必要になります。

参考文献


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