第5回公認心理師試験の問78について、私の考えを書いてみます。
虐待という問題を善悪で捉えるのかというテーマと関係しているかと思います。
問78はこんな内容
小児科外来で、医師が2日前に階段から転落した乳幼児の診察中に、虐待が疑われる外傷を認めた。医師が更に診察を行う間、乳幼児を連れてきた親の面接を依頼された公認心理師の対応として、最も適切なものを1つ選べ。
(第5回公認心理師試験 問78)
① 親の生育歴を聞く。
② 親の悩みや感情を聞く。
③ 受傷起点の詳細を聞く。
④ 受傷と受診の時間差の理由を聞く。
⑤ 他の家族が受傷に関与している可能性を聞く。
虐待が疑われるケースですね。
対応ガイドラインなどのマニュアルは見当たらないらしいです。ですので、暗記問題ではありません。
多くの受験者は「児童虐待の通告義務」を試験勉強で覚えるので、「いかに通告するか」という発想をしてしまったようです。
しかし、この設問では暗記知識よりも、こうすればどうなる、ああすれば何がおきる、という感覚、すなわちコートセンスが問われているように思います。
Kojunの考え
通告義務の意味を想い、どんな対応をしたら後に何が起きるかを推測する。
まず、取り調べは心理師の仕事ではないと思いました。虐待の証拠集めとか、話の矛盾や嘘を見破るというのは心理師の仕事ではないだろうと。
また、虐待であったとしても、簡単に加害が判るようなことを言うとも考えにくいです。
出題の背景
日本では親は悪者という扱いをされてきたけれども、実際の多くの場合には親への支援が重要という出題者先生の意図がうかがえる。
ニュース報道される例の陰で、虐待している親も苦しんでいることは非常に多いだろうことは心理支援者として知っておいてよいでしょう。というか、そのための心理専門職でしょう。
面談開始時点での推測・予測
事例の今後は児童相談所などによる介入が行われる可能性があるので、親(加害に関わる)の反発、否認、支援の拒否などが予想される。
リアルな心理支援に携わっている者としては、この予想が強烈に浮かび上がります。
つまり、この設問は心理支援を受ける準備ができていない段階の人への対応をどうするかという問いだと思います。
となると、このタイミングの面接は、介入が行われる前に、「すべての専門職が敵ではない」ということをインプットしておく最後の機会になるかもしれないとうことが重要になるでしょう。
問78への解答
取り調べ的な役割を捨て、この面接の後に何が起きるかを考え、選択肢の2番(親の苦労などについて傾聴する)を選びました。
正解でした。
Kojunは虐待の加害者/被害者の双方と共に歩んできました。ですから、これまでの試験問題が「虐待が疑われる場合は児童相談所へ通告」という暗記知識を問うことに残念に思っていました。この問題には関心しました。