ネイティブセラピストなどの心理支援者の活用法として、私がビオンサイクルと呼ぶものがあります。(ビオンの理論に基づいているので、このように呼んでます)
セラピストが「失敗しちゃったね」「恐いのね」「困ったね」「悪い子ちゃんね」「痛いね」と言うとき、抱えられないものが、抱えられるように小さくなって返ってくることがあります。
セラピストが「痛い」を受け取り、「痛いね」と言って返したとき、「痛い」が小さくなって返ってくるのです。
一般的にカウンセリングでは「あなたホントは自信ないんでしょ」などとジャッジしてはいけないとされていますが、「あなたホントは自信ないんでしょ」と言ったときでさえ、「自信のなさ」が小さくなって返ってくることがあります。小さくというのは自信が出てくるという意味ではなく、自信がないという現実を抱えやすくなるということです。
「自信がない、うわあ」という恐ろしい体験が、「自信がなくて困ってるよ、あららどうしましょ」のような軽減された体験として返ってくるわけです。
ただし、小さくなって返ってくるかどうかは、セラピストの言い方・生き様やセラピストとの関係性次第です。
オネエキャラの占い師が「あなたホントは自信ないんでしょ」と言うのと、白衣を着た専門家が「あなたホントは自信ないんでしょ」と言うのとでは違うわけです。
当事者性をもつネイティブ・セラピストは、これができることがあります。
それは、同情しない共感によってなされます。
つまり、それは「それを怖れないセラピストの姿」や「怖れを隠さないセラピストの姿」などを目撃することで、それが小さくなるとも言えるでしょう。なんでそんなことが起きるかというと、モデル学習、摂取同一化、外在化などなどいろんな説明ができるかと思います。
その原理がなんであれ、小さくなって返ってくる心理支援者かどうか気にしてみることはお勧めです。
その心理支援者に何かを預けてみて(苦しみを話してみて)、それが返ってきた(オウム返しでも、意見でも、解釈でも)とき、小さくなっているかを確認してください。小さくなっていれば、相性がよいということかもしれません。
参考:『ヴィジュアル 精神分析ガイダンス:図解による基本エッセンス』Chapter.4 長尾博