心理セラピーの現場では、「苦しんでいる人ほど、解決しやすい」と言われることがあります。
悩みの解消をしようとしない、あるいは解消いしたにもかかわらず悩みの状態に戻ろうとするということが起きます。いわゆる、抵抗ですね。
どういう人が悩みを解決するかというと、ちゃんと苦しんでいる人なんですね。
ところが、「ちゃんと苦しみましょう」と言ってしまうと誤解があります。
「苦しむ」には「苦しみを増やす」という意味と「既にある苦しみを自覚する」という意味が混同されています。克服プロセスに必要なのは後者ですね。「苦しみを大切にする」と言ってもいいかもしれません。
これを「苦しみを増やすとプロセスが進む」と勘違いしてしまったのが、お釈迦様が批判した苦行というやつだと思います。
なので、短期間での成果を期待する心理セラピーでは、苦しみを大切に扱います。
最近何度も言いますが、心理セラピーをしたり、克服しようとするから苦しむのではありません。元々ある苦しみを大切にしているのです。「当クリニックでは苦しまない心理療法をしています」なって説明はこのあたりの誤解を増やしているかと思います。でも、確かに苦しむプロセスもあるので間違いではないのかもしれませんが、誤解を招いているかと。
一方で、苦しみの緩和も必要。苦しみそのものを応急的に減らしていくことも大事。
苦しみを減らしながら、苦しみを大切にするわけです。
無くさずに減らすことを「手放す」と言う人もいます。
「苦しむ」という言葉は嫌われます。でも、必要があるから苦しむわけです。
苦しみちゃんを大切にするときも必要。
ただ、苦しみと自分を一体化させすぎないようにします。苦しみを所有しながら、ちょっと距離を置く(脱センタリング)をお勧めします。