コンサルテーションとPoints of You
専門知識を持ったインストラクター、コンサルタント、カウンセラー等がPoints of Youを使う場合のスキルミックスについて。
Points of You®の基本メソッドでは、クライアントに対して助言は必要ありません。ですが、助言をすることも役割であるコンサルタントが使う、情報提供も役割であるキャリアコーチ/カウンセラーが使う、というような応用もあります。カウンセリングも辞書に「助言」と書いてあるとおり、ある種の説明や提案をすることがあります。ここでは、コンサルテーションのような、性質の違うスキルを組み合わせて使う場合のヒントを述べます。
クネビン・フレームワークというものを参考にしてみましょう。これは金融危機、テロ、災害などの国家レベルの緊急時の対応のために作られたものですが、個人やグループに対しても参考になります。
状況のレベルによって、何が重要かが変わるという考え方です。図中の赤文字が推奨される対応を表しています。
多少勝手な解釈を含めますが、これをグループや個人に当てはめてみましょう。状況によって支援者が使うスキルが異なるということが示唆されます。
多くのセッショニストは、コーチング、カウンセリング、コンサルティングなどの複数のスキルを持っていて、それらを切り替えながら使っています。その切り替え方のノウハウは様々ですが、これはその叩き台となるでしょう。
状況 | 概要 | 例 |
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Simple | ルーチンやマニュアルが通用する状況 | 「注文をキャンセルされたので、規定に従いキャンセル料を請求する」 |
Complicated | 問題は分っている、答えがあることも分かっているが、答えを知らない状況 | 「助成金を申請したいが、手続きを知らない」「恐怖症を治したい」
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Complex | 困っているが、何が問題なのか分からない状況 | 「不安だ」「業績不振」「職場の雰囲気が悪い」 |
Chaos | 考えている暇もない状況 | 「今日使うはずの機材が壊れた」「発作が起きた」 |
Disorder | 何もできない状況 | 「救急車で運ばれ中」「大切なものを失った」 |
1回の面談の中で、これらの状況が変化する場合もあります。
Simpleの場合
この状況のクライアントに対しては、話を聞くだけでよいです。クライアント(または部下)は勝手に喋って、勝手に納得して終わります。
目的、計画、スケジュールを確認してもよいでしょう。
この状況に対してPoints of Youを使う必要はなさそうです。
Tachalesが重要になりますが、業務命令としてのtachalesはセッショニストとしての立場から促すtachalesと区別するのがよろしいかと思います。その意味でも、この状況に対してPoints of Youを使うことは少ないかもしれません。
やるべきことは分っているが、心理的ハードルによって実行できないという場合には、それと向き合うためのセッションを行うことは考えられます。
Complicatedの場合
この状況に対しては、コンサルテーションが求められています。答えや提案を出すか、それを出来る専門家を紹介します。
この状況と判断した場合は、Points of Youを使う必要はあまりなさそうです。
自らが専門家の場合(コンサルタントの役割をする場合)、原因や状況を分析・整理するためにヒアリングツールとしてPoints of Youカードを使うことは考えられます。
また、教える内容が体験を通して学ぶものである場合、Points of Youを使ったオリジナルワークを取り入れることは考えられます。
マネジメントであれば、職務が合意されていない場合もここに含まれそうですが、「Disagreed」という状況を設けてもよいかもしれません。これを解消するために、Points of Youの活用法があるかもしれません。(それはコーチングゲームのレイアウトチャートではないでしょう)
Complexの場合
この状況に対しては、コーチング、ファシリテーション、カウンセリングが求められます。
この状況と判断した場合は、Points of Youが活躍する可能性があります。レイアウトチャートを使ってコーチングができます。グループに対してはファシリテーションができます。
寄り添い(絶対的肯定、共感的理解)を加えることができればカウンセリングになります。カウンセリングを行う場合は、マネジメントやコンサルテーションへスキルを切り替えるときに、この寄り添いを裏切らないように注意する必要があります。
「問題を明確化する」「正解のない問題に対して自分なりの答えを出す」などが含まれます。
もやもやした考えや想いを言葉にしてゆきます。求められているものは「気づき」「霧が晴れる」です。
Chaosの場合
この状況では、「よい答え」を探す余裕はありません。直感に頼って決断と実行に踏み切ることになります。
コーチングゲームのようにじっくりと自分に向き合う余裕はありません。Punctumのような使い方で、直感的な判断をします。正直に、純粋に、一番よいと思う選択をします。ポージング+カード1枚が役に立つかもしれません。
Disorderの場合
ポージングの手法で、脱センタリング(パニック状況と心を離して、気持ちを落着ける)ことが出来るかもしれません。ここでカードを使うというよりは、日ごろの修練が多少の支えになればよいかと思います。
まとめ
Complexとして扱う範囲を決めて、そこに対してPoints of Youを使う。その範囲をうまく抽出できるとよろしいかと思います。状況を判断するだけでなく、積極的に状況を選択してゆくというマネジメントも可能です。
また、ご自身の業務で現れる独特の「状況」を定義してゆくこともスキルミックスになります。
また、Points of Youの活用に限らず、面談で扱っている状況を随時意識してみるのもよろしいかと思います。そのモードがクライアント(面談相手)と同期していると上手くいくように思います。
実践が極まってゆくと、全ての状況の境目がぼやけてスキルを同時に使っているようなことも起きるかと思います(状況が入れ子になることがある)。フレームワークはあくまで基本の型にすぎません。いずれ越えられるのが枠組みですから。
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