このページは、ジェンダーとセクシャリティの多様性の入門ガイドにしてみたいと思います。

多様性には人間の心のテーマがよくよく表れます。それは時代が私たちに何かを気づかせようとしているようでもあります。

男性性と女性性の両方を使う生業である心理セラピストとしても関心のある分野です。

企業のCM

啓蒙家・活動家だけではなく、企業が多様性の存在を認めているというのは近年の大きな特徴だと思います。アパレル、美容、ファミリー関係(不動産、車、携帯電話など)の反応が早いようです。気軽に見やすいものとして、まずは企業CMをピックアップしてみましょう。

アパレル Calvin Klein (2015年 – 同性愛カップルを起用した例)

自動車メーカー 日産(イスラエル) (2016年 – 多様な家族のありかたを支持)

「ママが2人いてもいいじゃない・・・」


ところで、かつてのドキュメンタリーTV番組では「きわめて少数派であるゲイの人たちにとって・・・」というナレーションが入っていましたが、何を根拠に「きわめて少数派」と言っていたのでしょうか?

2015年の電通の調査結果でLGBT層は7.6%となったことはマーケティング界ではよく知られ、ビジネス界も反応しつつあります。(顧客や従業員の中にその割合で存在し、もはや少数派とは言えないという現実が認識されました。その周りにいる身内・お友達を考慮すると、それをあからさまに差別否定することは市場の2、3割を失うリスクを意味します)

LGBTQをきっかけに、LGBTQに限らず様々な働き方や顧客視点に目覚める企業もあります。一方で、対外的なCSR活動はしていても、それは外面だけのことで、社内職場には差別があるという企業もあるようです。

参考リンク:

受容が人の本音レベルへと浸透するのには時間が必要ということかもしれません。私の耳に入る情報でも、LGBTQフレンドリーを謳っていても宣伝部に施策の決定権がある会社もあります(損得勘定だけのダイバーシティ推進)。かと思えば、従業員のLGBTQ当事者に社長自らが話しかけて声を聴いている会社もあるようで、実態は様々です。

また、ブームに乗ろうとする、なんちゃってLGBTビジネスの気配もあります。(汗)

ジェンダーの時流(前編)

セクシャルマイノリティと呼ばれたものに対する社会の態度は概ね次のように変遷してきているようです。(同性愛と性別トランスをごちゃ混ぜで失礼します)

神聖/第三の性 → 不道徳である → 病気である → 個性である → 多様性の一部にすぎない

前近代には、各地の社会・文化で、男女以外の性が認められていました。霊的な存在、祈祷の役割、相談を受ける者というような社会的地位があったようです。(現代でいうところのカウンセラーやセラピストじゃないですか!)

不道徳や精神疾患として拷問的矯正(たとえば、ゲイに男性ヌード写真をみせながら電気ショックで苦痛を与える、レズビアンに男性との性行為を強制するなど)の対象となる時代を経ましたが、医療現場でもセラピー現場でも、それらは治すべき病理ではないことが再び明らかとなり、今日に至ります。(病気扱いしないという動きを、「脱病理化」といます)

日本の場合で言うと、それらが不道徳や精神疾患とされたのは、明治維新の西欧化、ドイツ医療の導入からとの説があります。

ただ、精神疾患とされたのは、不道徳という理由で攻撃されることを避けるための次善策という意味もあったかもしれません。

2013年、『精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)』から「性同一性障害(GID)」という言葉もなくなりました。(精神的な病としての扱いではないことが明確に。同性愛については、ずっと以前に疾患としての扱いでなくなっています)

そして、ビジネス界が反応を始めたことは上述の通り。一方で、なんでもかんでもLGBTで一括りにされることも多くなっています。

性別違和(旧 性同一性障害)の人権を認めましょうと意識が高まる反動で、診断書を持っていない人や、軽度の性別違和、Xジェンダー(両性・無性・中性など)、揺らいでいる人などのLGBT未満はニセモノ扱いでパッシングを受けるという新たな差別も発生しています。

私の体験でも、「タレントのはるな愛は女性として美しい。そうなれないお前は生まれながらに出来損ないだ」「性適合手術で睾丸摘出をしないのは、人生から逃げているからだ」などと責める人に出会ったことがあります。(ちなみに、本件に限らず、他人を変えようと責める人は、深層心理にある種の隠された怖れ(人生の心理課題)があることが多いです)

心の解放を置き去りにすると、「男らしく・女らしくあるべき論」を脱しても、新たな差別基準「LGBTらしくあるべき論」が出来てしまうわけです。

入門書と入門映像

入門のため、あえて古めのものを挙げます。

東海テレビ

2017年 キャンペーンCM


有名な活動家たちが出ています。(全てのLGBTQがこんなに自分を晒して話せるわけではありません。きわめて分かりやすい氷山の先っちょです)


専門雑誌ですが、一般の方も読めます。医療や社会動向の入門。他の専門雑誌が「LGBTの支援」というような支援者目線(助ける人と助けられる人という関係)で特集しているのに対して、近年どんなことが起こっているのかという状況把握の視点で特集されています。


体系的な知識ではなく、典型的な事例でもなく、実在する多様な個々を紹介しています。「男らしさ」「女らしさ」は自然がつくったのか、社会がつくったのか? という切口が特徴的です。「マイノリティ=珍しきもの」といいう起点ではなく、人類全体のテーマとして取り上げているのが、さすがジャーナリズムです。


拾い読みで、コンパクトに用語・基礎知識が得られます。ポストLGBTへ向けた評判のよい入門書です。

ジェンダーの時流(後編)

性の多様性についての認識が進んでいることは、「自分らしさ」、「アイデンティティ」、「自愛」、「あるがままの受容」についても地続きのテーマとして見直されるきっかけとなっています。自分が自分であるためにという観点で興味をもつ人も多いのではないでしょうか。

2017年頃から、トランスジェンダーの中でも、「男でありたい」「女でありたい」を超えて「私でありたい」と言う人が増えてきたように思います。(ex.「女として扱われたくないが、男になりたいわけではない」「性別移行者であることも含めて私は私」などなど)

さらに最近では、学術界でも国連でも、二元論を脱する動きかあります。男か女か、セクシャルマイノリティか非セクシャルマイノリティか、のような二者択一ではないという現実が認識されてきています。中性的な人や、ちょっとだけセクシャルマイノリティ的な人は実際にいます。

少数派を扱うLGBTという言葉よりも、多様性を扱うSOGIEという枠組みが現実的になりました。

SOGIEでは、Biological Sex(身体的性別)、Sexual Orientation(性的指向、いわゆる「誰を好きになるか」)、Gender Identity(性自認)、Gender Expression(性表現、服装など)で、人の多様性を捉えます。それぞれの項目に、男女だけでなく、「両方」、「どちらでもない」、「中間」、「こっちより」、「不明」、「流動的」など様々なあり方があります。入門としては、SO(Sexual Orientation)とGI(Gender Identity)は別のことである(たとえば、自分を女だと思っているからといって、性対象が男であるとは限らない)ということを覚えておくとよろしいかと思います。

2018年頃から、Gender Identity(性自認)が二元論におさまらないXジェンダーという自覚の人たちが存在を表し始めています。

今後は、Sexual Orientation(性的指向)についても、グレーゾーンの人たちが存在を表しそうです。(同性愛というほどてもないけど、絶対違うというほど抵抗もないというような指向を「フレキシブル」と言ったりします)

いわゆる「普通」はむしろ少数派であることが見えてきます。

参考リンク:

当事者のお話

日本のYouTubers

   

書籍


面白くて気軽に読めるコミック。性別適合の体験談。


ほのぼのコミック。


この分野の基本書と言ってよいと思います。一編ずつ読むとよいでしょう。


マイノリティ対マジョリティというよりは、多様性という捉え方が現実的という観点がよくわかる。


当事者である著者の心情がよく伝わります。ゲイに限らず多くの方に共感があるかもしれません。


一般論ではなく、様々な個を多数とりあげて著者がインタビューしています。当事者や当事者に近い方々にとって、興味深く読めるかと思います。当事者が身近でない方々には、ちょっと難しいかもしれません。

ItGetsBetter Japan

2010 アダム・ランバート(歌手、舞台俳優)

「どこかの小心者が言う『君は間違っている』を信じないで」

2011 NYのジェイミー君(自殺の4ヵ月前)

「まずは自分自身を愛してください」

YouTube社

2015年 動画メドレー(日本語字幕あり)

TED

  • 2014/11 ジェンダーを踏み越えてゆくこと(日本語字幕あり)「存在はすべて変化し続けています」
  • 2015/01 何が「普通」か…(日本語字幕あり)「小さな子供たちはそんな風です。ありのままのあなたを受容れるという、実に稀な能力を持っています」


記事

人々の反応

2017 街頭インタビュー(Asian Boss、Ask Japanese、キットチャネル)
  

REACT

2013 子供たちに同性婚をみせたら、どんな反応?(日本語字幕あり)

今日の日本では、あからさまに否定する人は多くありません。しかし、未知なるものへの怖れはあります。やたらと「私は何とも思わない」と言う人は、なんとも思っています。「逆に励まされます」と言う人は、可哀想な人として見ています。学校で教えると一部の親からクレームがあります。言葉の節々や、いざ肉親に関係するときに、隠れた本心が見え隠れします。しかし、それがあるからこそ、本当に何とも思わない人、驚きながら適応してゆく人、人そのものを見る人がいることも明らかになっています。

国際情勢

Chebu Russia TV

2015? ロシアで男性同士が手を繋いで歩いてみたら

BCC

2015 同性愛者の処刑(イラク)

いくつかの国では、異性装や同性愛は犯罪とされています(国連加盟国の37%で同性の性行為が違法)。逆に、いくつかの国では、人権を保証するための法律があります。日本はというと、そのどちらでもなく、法律上はセクシャルマイノリティが存在しない「不可視」となっています。

参考:地図で見る同性愛が違法の国/合法の国

国連における性的指向と性同一性に関する声明への賛否


青=賛同国、緑=反対表明国  2012 by Knowz

一見すると欧米が先進的のようにみえますが、そもそも差別を世界に広めたのは欧米のキリスト教文化(アダムとイブの世界観)と植民地開拓であることにも注意。

国連

2016年 排除の代償

統計は興味深いですが、「はたして、経済損失の問題なのか」という疑問を感じないでしょうか?

イスラムに対する西洋の文化的な優位性を示すためにLGBTQが利用されているという説もあります。

なお、なにかと遅れているとされる日本ですが、なんだかんだいって、セクシャルマイノリティたがからという理由での直接的な暴力(路上で殴られるなど)は少ない方だそうです。北米などは進んでいるイメージあるかもしれませんが、最近まで同性愛難民に対してセックスしている写真を提出させていたなど、全体的に人権意識が高いわけでもなさそうです。

手の指が四本の奇形児は西洋では魔女狩りの対象でしたが、日本では神の使いとされました。

根底では、日本は最先端に近いのかもしれません。

脱マイノリティ概念

マジョリティとマイノリティとの対立概念から脱することを「インクルージョン」と言ったりもするようです。

70~80年代頃の漫画のキャラクターで、『パタリロ!』のバンコランとマライヒ(今でいう同性愛者)や、『ストップ!!ひばりくん』のひばり(今でいうトランスジェンダー)がいました。作者の方々は同性愛者とかトランスジェンダーというものを描こうとは思っていなかった、そんなものは知らなかったそうです。そこにはキャラクターひとりひとりがあるだけで、マイノリティという概念はなかったのですね。

 

差別への反作用でLGBTというような概念が生まれましたが、現代のダイバーシティ、インクルージョンの時流は、マイノリティという概念がなかったころへ戻ろうとしていると言えるかもしれません。

ジェンダーをフル活用する時代

「男性性/女性性」というと、昔は男性と女性の違いのトピックが好まれていました。今では、「男と女の違いなんて話は聞き飽きた。男性性と女性性の統合について知りたい」という声がきかれます。「男と女は別の生き物だからね」なんて言っている場合ではなくなってきているようです。

殆どの心のトラブルにあるがままの自分を否定することが関与していることを顧みると、世界が「間違いを正す」アプローチを越えようとしている昨今のようにもみえます。知らないがゆえの怖れを取り除いてみると、そこには「マイノリティ」も「障害」もないのかもしれません。

 

心理セラピスト的に気になること

一つは、差別を解消してゆくという流れの中で、政治やビジネスに利用されるという場面や側面も出てきています。当事者としては、社会の変化を望みながらも、利用されている感じもあるといったところでしょうか。

もう1つは、社会の変化は1ステップで理想に到達するものではないということです。法改正や社会の対応について、その不完全さを批判しがちなのが人間です。不完全さを批判して一歩に貢献した人たちを攻撃するか、それとも、自分の気持ちに向き合って、さらなる要望を述べるのか、変化のたびに選ぶことになります。

心理トラブルの観点からすると、もしもこの多様性に対する否定勢力があったとしたら、おそらくは多様性肯定派を刺激して、感情的に叫ぶ姿のコンテンツを蓄積することを狙うであろうと思います。そこで叫ばれている内容が正しいかではなく、感情の連鎖が世の将来を支配するという視点です。正当な怒りであるからこそ、否定勢力にとって都合の良い展開が可能になりします。正しくない者が正しい者に勝つ方法は、正しさを背景に殴らせるというものです。この側面について冷静に観察している当事者もいますが、「なぜおまえも叫ばないのか。おまえのその態度が差別を許してしまうのだ」と叩かれかねないわけです。社会的な心理戦は社会感情を計算にいれて仕組まれます。2020年オリンピックが終了して多様性肯定を後押しする経済的理由が消滅したときに、心理戦の勝負が問われると専門家の間では言われています。

映画など

 

 

最近の動き

ゴールデンウィークをプライドウィークに!!(2018年4月28日~5月6日)
GID学会 研究大会・総会「二元論からの飛翔」(2018年3月24-25日)
日弁連 シンポジウム「同性カップルの法的保障を考える」(2017年11月)
LGBTだけが特別扱いなのか ニューヨークから見た“保毛尾田保毛男“騒動(2017年11月)
「同性婚」を巡って論争巻き起こる(パートナーシップ証明の条例案の議会提出)(2015年3月)

入門向きな交流会(東京)

LGBT文京区
※年齢層が幅広いです。
Queer&Ally
※年齢層は若めです。

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