赦す(ゆるす)と弱くなるのか
カウンセリングに行くのは弱い人間だ、と思っている経営者や男性は多いです。
※この記事を書いた当時はそうでした。
実はこれは日本の場合です。欧米では、エグゼクティブはカウンセラーを雇います。
コンサルタントは正すのが得意。カウンセラー/心理セラピストは赦す(ゆるす)のが得意。
「正すことでしか進歩はない」「赦したら悪くなる」と信じているのであれば、カウンセラー/心理セラピストは必要ないかもしれません。ですが、はたして、そうでしょうか。
原因によって対処法が異なる
ちょっと、準備体操です。
例えば、新入社員の「電話に出るのが恐い」という問題があったとします。
それが単なる慣れの問題であれば、無理して挑戦しているうちに慣れて大丈夫になるでしょう。「電話は新人がとる」という運用ですぐに解決します。
しかし、トラウマ等が原因で過緊張して電話に出れないような場合は、無理して挑戦しても大丈夫にならないでしょう。この場合は恐さを認めてゆくアプローチが解決法になることがあります。
原因によって、対処法は異なるわけです。
どうやら、1つの正解パターンを知っているからといって、それがいつでも正解とは限らないようです。
この2つのアプローチの違いをKojunは、「正す」か「赦す(ゆるす)」かという言葉で捉えています。
同様のことをここでは、「バランス」か「リリース」という視点で説明してみます。
「リリース」は「手放す」とか「解放する」とも訳されます。
二足歩行ロボットは諦めるから倒れない
ここで、ホンダが世界初の二足歩行ロボットASIMOを開発したときのお話を。
バランス(正すアプローチ)
開発当初、どうしてもすぐに倒れてしまったそうです。
前に倒れそうになったら後ろへ戻そうとする、後ろに倒れそうになったら前へ戻そうとする制御を採用していました。
エアコンの自動温度調整と同じ、制御工学の常識ですね。
これがバランスをとるアプローチです。
ところが、センサーやプログラムの性能を上げても、何かがぶつかったり、躓いたりすると、やっぱり簡単にロボット倒れました。
リリース(赦すアプローチ)
「人間ってそんな簡単に倒れないよね。どうなっているんだろ?」と開発者さんたちは思ったに違いありません。
そこで、立っている人間をドンと押してみた。
すると、なんと、前に倒れそうになった人間は、後ろへ体を起すのではなく、前へ足を出したのでした。
これを私はリリースと呼びます。
バランス&リリース
これらの2つを組み合せて二足歩行ロボットの開発が成功したそうです。
小さな揺れはバランス(正しいところへ戻す)のプログラムを使い、大きな揺れにはリリース(とっとと諦める)のプログラムを使うということですね。
試練の大きさによって対処法が異なる
二本足というのは、転ばないためのシステムではなくて、上手に転んで超瞬時に起き上がるためのシステムだったとでも言いましょうか。
ダンスや走ることは、倒れ続けること
さて、「正すことでしか進歩はない」「赦したら悪くなる」というのは本当でしょうか?
実際、こういう経営者さん、苦手なトラブルが来ると立ち直りは遅いです。
コンサルに教えてもらった方法を根性でやり抜くのはバランス。カウンセリングで泣いたり、「恐くてできねーよー」と叫んじゃうのはリリース。といったところでしょうか。
ところで、「走る」というのは「倒れ続ける」ことなのだそうです。従って、リリースのプログラムを習得しておかないと、人生を突っ走ることはできません。
「ダンス」も同様。決して正解することなく、刻一刻と変わり続ける正解の周囲を倒れ続けます。私たちは正解から外れている自分や仲間を赦し、動き続けるわけです。
くしくも、心理セラピーでリリースを突破して、心の罠を抜け出した方に感想を尋ねると、「踊りたいです」というのが一番多いです。倒れることができるようになると、踊ることができます。負けることができるようにならないと、参加させてもらえない舞台もあるわけです。
上手に転んで次のステップへ進みたい方は、ご相談を。