カウンセリングやコーチングなどの対人支援での「行動」の支援について違いをみてみましょう。
来談者(クライアント)が企画した行動を実行できなかったときに注目すると、支援の性質が様々に異なることがわかりやすいでしょう。
企画した行動とは、たとえば「〇〇教室を見学する」「次の面談までに映画を観に行く」というようなものです。
1.達成行動を促すスポコン・コーチング
これはスポーツ分野から派生した古典的なコーチングや自己啓発などで行われているものです。
わかりやすく言うと、企画した行動を実行できなかったとき、支援者はがっかりします。支援者は励ましたり、スモールステップを提案したりします。叱咤激励をする場合もあります。
行動に対して心理的ご褒美(正の強化)、行動できなかったことに対して不快(負の強化)を与えようとします。
2.行動による変化を重視する行動療法
これは行動療法が代表的でしょう。何かを達成するためではなく、心の状態を変えるための行動企画を勧めるのが特徴となります。
転職が目的の来談者が「部屋の掃除をする」と企画しようとすると、1の支援者は「そのことと転職は関係ないでしょ」と修正するのに対して、2の支援者は「それをすると気分はどのように変わりますか?」と確認します。
実行できなかったとき、支援者はややがっかりか、ニュートラル(とくに喜ぶでも、がっかりでもない)です。実行できたときはやや喜ぶか、ニュートラルです。支援者が喜びを演出して心理的ご褒美(正の強化)を与えなくても「行動したら気分が変わった」が実現していることが大事です。
3.失敗を受容するコンテイニング
これはKojun等の心理セラピーや愛着安定化カウンセリングなどの場合です。
実行できなかったときは、支援者は非常に重要な手掛かりを得たと実感します。「1週間以内に大統領になる」などは出来なくて当然ですが、「映画を観に行く」「〇〇教室を見学」するなどはやろうと思えばできる可能な行動です。それが出来なかったということは、そこに大切な何かが隠れているということです。1や2の支援者はそれを
「問題」と呼ぶかもしれませんが、3の支援者はそれを「その人の心」だと思って安全に扱います。
その扱いをコンテイニング1と呼びます。コンテインされるとそのブレーキの正体が姿を現わしたり、解放されたり、心の安全が育ったりします。そしてまた、あらたな冒険の準備ができます。
1のタイプの支援者がこのメカニズムを活用しようとすると人を傷つけるセッションになります。「出来ない理由を正直に言いなよ。そこを直そう」みたいな心理的安全をそこねる場ができあがります。コンテイニングはそのように行動という成果を求めません。行動企画は目的ではなくて心を癒すための手段なのです。
なので、ヘンな言い方をすると、支援者は行動が実施されなかったとき喜びます。実施されたときは、ニュートラルです。
失敗を良きものとして活用するのがこのタイプのサポートです。