マインドフルネスの入門案内

マインドフルネスを学ぶなら、体験ありきなのですが、たくさんの人たちが教えているので、自分の習っていることが主流なのか亜流なのか、どんな特徴なのか、わからなくなりがちです。

そこで、実践会とは別に、教材を通してスタンダードに触れておくのもよいかと思います。これは必ずしもスタンダードが一番よいという意味ではありませんが、比べたり選んだりの基準になると思います。

ここではあまり費用をかけない前提で、スタンダードから始める入門案内をしてみます。

2つのマインドフルネス!?

一つは、ピュア・マインドフルネス。これは、真実から目をそらさずに生きることなど、根本に立ち向かうものです。指導者には僧侶が多いです。宗教(仏教)っぽさはあります。

もう一つは、臨床マインドフルネス。目に見える症状の緩和を目的として、エビデンスの蓄積を目指したものと言えそうです。また、宗教色を廃した代わりにというか、商材っぽさ、資格商法っぽさがあります。

生き方のためのピュア・マインドフルネス、対症療法としての臨床マインドフルネス、両方を知っておく価値がありそうです。そして、それぞれを象徴する人物が、ティク・ナット・ハン禅師とJ・カバットジン博士です。

英語が聴ける人はこちら

英語が聴けるならコストをおさえて学べます。

The Plum Village app

ティク・ナット・ハンの教えが学べるスマフォアプリです。これひとつで必要な教材(テキスト、講演音声、瞑想ガイド音声)がほとんど手に入ります。

瞑想センターで実践されているように、定期的に鐘を鳴らして瞑想タイミングを知らせることもできます。

Guided Mindfulness Meditation Series 1 by Jon Kabat-Zinn

カバットジンによる音声(Audible/CD)です。後述する日本語版「4枚のCDで実践するマインドフルネス瞑想ガイド」のオリジナル。シリーズの「1」となっていますが、日本語版CD4枚分に相当するようです。

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『全訳 念処経 – ブッダの瞑想法』宮元啓一

これはマインドフルネスというより、その源泉となるブッダの瞑想法です。マインドフルネス入門としてこれを勧める人はレアかと思いますが、「源泉はこんなにシンプルなのかー」といった感じで予習しておくと迷子になりにくいかもしれません。古代瞑想というと宇宙のように広大で難解なイメージがありますが、これは60ページくらいの語り掛けで、細かいことに拘らなければ、さらりと読み通せます。観察の対象を「身体」「感受」「心」「法」という独特の領域で捉えています。

もしかしたら、トラウマ・サバイバーには現代風のマインドフルネスよりも取り入れやすいかもしれません。サバイバー風に言えば、「感受」が自分のもつ苦しみで、「心」が苦しみの受け止め方(克服や防衛)というように思います。

マインドフルネスは「正しい気づき」という意味ですが、何に気づこうとしているのか知らずに実践するだけって、なにやってるのかわからなくなりそうです。サバイバーは、自分の身体というもの(生物としての自分)を失っていたりしますからそれを取り戻し(「身体」)、空気のように日常化して見えなくなっている苦しみを捉え(感受)、自分という存在(「心」)を取り戻し(自分との対話、どうしたいか分かるなど)、出来ることと出来ないこと(「法」)を知る(無駄なあがきをやめて、出来ることが出来るようになる)のだと思います。

『ティク・ナット・ハンの幸せの瞑想』ティク・ナット・ハン

ピュア・マインドフルネスの代表として紹介したいのがこちら。ティク・ナット・ハンというのはマインドフルネスを世界に広めた僧侶/平和活動家です。

この本はプラムヴィレッジのリトリートや研修で用いられてきた数々の実践法を紹介しています。好きな箇所から読むことができそうです。

全体を通して、「マインドフルネスは日常生活の中で実践するものですよ」というメッセージを感じます。

次のような節はマインドフルネスの入門によいかと思います。

  • 意識的に呼吸する(p.16)
  • 座る瞑想(p.25)
  • 台所で(p.77)
  • 沈黙(p.159)

具体的な行動として生活に取り入れたいなら、次のような節が面白いです。

  • 歩く瞑想(p.31)
  • 食前の5つの祈り(p.75)
  • 深いくつろぎの瞑想(p.91)

いずれにしても、習慣になるまで実践してみないと、その醍醐味は味わえません。ですので、続けられそうな実践を2,3ほど早く見つけるのがコツです。この本はやさしそうでいて結構高度なことが書かれていますから、まずは日常生活にマインドフルネスを少しだけ取り入れて実践と繋がり、後々戻ってきて読むのがよいかと思います。本書を読み通すことは、実は入門じゃないかも。

『4枚のCDで実践するマインドフルネス瞑想ガイド』J.カバットジン

臨床マインドフルネスの代表と言えるのが、マインドフルストレス低減法(MBSR)です。それを開発したのがカバットジンです。

MBSRの基本テキストは別にあるのですが、マインドフルネスは実践してなんぼなので、あえてこのCD本を挙げました。

瞑想の音声ガイドですが、実践ポイントも喋ってくれるので、入門にも使えると思います。

毎日1時間×2ヶ月

4枚組で8週間の実践が想定されてます。もともとは施設に通うプログラムとして開発されているので、独りで継続するのは難しいと感じる人もいるかもしれません。本書の推奨ではCD1を2週間やることになっていますが、やりにくく感じたら他のCDを早めに聴いてみるのもよいかと思います。CD2、4はヨガです。やりやすいのから始めるという考えも必要かと。

とくにトラウマ・サバイバーやアダルトチルドレン等の場合は、そのコースをしっかりやろうとするよりは、自分にあった使い方を探すくらいの気楽さでやるのがよいと思います。

CD1について

「・・・・、それは重要ではありません」のように後から否定表現を付けくわえられて、「おいっ」てなりますが、そこは繰り返し聴いて慣れるしかありません。

「解き放ってください」という言葉の意味が分かりにくい人もいるかもしれません。オリジナルの英語では「Let it go. / Let it be.」となっているようです。「そのままにする」「なるにまかせる」みたいな感じでしょうか。私が訳すなら「そこに置き忘れてください」としたいと思います。

CD2について

別節の「ボディーワークの意義」をご覧ください。

CD3について

「なにもしない」ことをガイドされます。Kojunのワークショップの最初にやっているポージングも同じルーツだろうと思います。

心地悪い感じが出てきた場合の対処法も説明されています。CD1でも同様の対処は必要な気がしますが。

「7つの基礎」

本の中にはMBSRのガイドでよく耳にする「7つの基礎」が簡潔に載っています。これは実践を始めてしばらくしてから、「自分にどのようにあてはまるかなあ」と読んでみるとよさそうです。

※私はMBSR講師ではないので、これはMBSRの公式な説明ではなく、マインドフルネス等の実践一般から解釈した私見です。

学びの留意点

瞑想全般にありがちですが、現実逃避のためにポカーンとするみたいなのもちょっと違います。マインドフルネスは「気づき」という意味です。ポカーンや現実逃避を批判するものでもありませんが、別のものです。

一方で、トラウマを持つ方の場合、自分の内側に意識を向ける瞑想は、トラウマの感覚に触れてしまうこともあり得るので、無理のないようご注意ください。

また、マインドフルネスは心理実践の広きわたる基本的なものですが、それだけで何でも解決するという万能薬ではありません。

今回は権威どころを紹介しましたが、権威のあるもの(有名、スタンダード)が自分にとって良いとは限りませんので、試してみてどうだったか振り返ることが大事です。

※ちなみに、Kojunがワークショップなどで取り入れているマインドフルネスは、「気づき」の準備(気づける状態)に活用しますが、瞑想だけによる「気づき」は期待せず、「内側に意識を集中」もしません。「内側」よりも「いまここ」を優先します。実践メンバーはトラウマ・サバイバーが多いので、一人旅はさせないというか。気づきのワークは人と繋がりも保ちつつ、別に手厚く行います。

ボディワークの意義

「4枚のCDで実践するマインドフルネス瞑想ガイド」で、「マインドフルネスを学ぼうと思ったのに、なんでヨガが出てくるん?」と思った人のために、私なりにヨガの音声ガイドで学べることというのを挙げてみます。とくに各種トラウマのサバイバーやアダルトチルドレンにとって意味づけを意識して。

自立・自由へ向かう

音声ガイド内でも、正解はない、ガイドよりも自分の身体に従うように助言されています。

それをもう少し詳しく言うなら、最初は指示に従ってやってみます。自分の身体感覚と答え合わせをしてゆき、ガイドの指示よりも自分の身体が教えてくれることを優先してゆきます。

実践を続けることで、たとえば、どれくらいそのポーズをするかなど、ちょうどいい感じが分かってきます。呼吸をどのタイミングで吸うか吐くかはガイドが指示してくれますが、自分で分かるようになってくるかもしれません。

やり始めは「えいやっ」と思いきる必要があるかもしれませんが、だんだんと「いまやりたいなー」という感じがしてきます。

これは、「するべき」で生きてきた人が、「自分が本当はどうしたいか」が判るようになってゆくプロセスにも似ています。

出来ないことをしないが、出来ることはする

これはヨガのパートがそうです。たとえば、出来るところまで足を上げて、それ以上無理して上げようとしないが、足を下ろしたりもしない。つまり、出来ることをする、けど出来ないことはしようとしない、けど出来ることはする、ってことです。

日頃の行動も、無理したり、出来ることまで投げ出したりしていませんか?

足を上げるために顔を強張らせるというように不要なところに力が入るのも、なんだかそれと似ています。

この学びに興味ある人は、ヨガ、臨床動作法なども楽しめるかもしれません。

実は居合道もちょっと似ています。居合は刀を抜く練習をするのですが、「さあいまらか刀を抜くぞ」っていう顔をしたら相手に除けられてしまいます。顔に力をいれずに、必要最低限の動作で刀を抜きます。

これらは「自己調整」という言葉で説明されることもあります。

それは、寒いときにセーターを着るかどうか、あまりに気分が悪くなったために映画館で席を立つかどうかなど、その瞬間の自己のニーズに的確に応えるのに役立ちます。

デイビッド.A.トレリーヴェン『トラウマセンシティヴ・マインドフルネス』p.45(自己調整についての説明より)

これらの例は、不必要に我慢強いという病だった私にも似たようなことが思い当たります。「自己調整」という言葉は情動などについて使われることが多いですが、ここでは行動の自己調整として練習します。行動は目に見えて具体的なので練習しやすいです。

実践会を探す

いきなり高額な費用のかからない情報源を挙げます。ピュア・マインドフルネス系です。

その他の参考

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