人生で繰り返されるパターンの正体

「なぜか不適切な異性を選んでしまう」「いつも肝心なときに〇〇してしまう」というような、人生で繰り返されるパターンというお悩み。

繰り返されるということは、懲りても解消しないということですね。つまり、無意識レベルに問題の原因がある可能性が高いということです。

置き去りにされた自分に触れる

人生で繰り返されるパターンの背後には「置き去りにされた自分」がある場合があります。

心理セラピーでは、人生を支配する感情反応パターンや対人パターンを手放すために、過去の感情を癒す、過去の感情を解放するプロセスを体験します。

それは過去の感情とでもいうものですが、感情について”考えて”も解決しませんので、「置き去りにされた自分」という表現を用いています。それは考える対象ではなく、出会う対象だからです。

繰り返しパターンを解くには、現在の感情解放をしてもだめで、過去の感情解放をする必要があります。

ですので、ここでは「過去の感情解放」と「現在の感情解放」を対比して書いてみたいと思います。

「解放」はニュアンスが限定的で、抑圧論に寄りすぎるので、専門的には「感情処理」「感情を所有」などと言うことが多いように思います。

現在の感情解放

まずは入門として、現在の感情解放についてお話します。

現在の感情解放プロセスはこんな感じです。

相談者  「最近、友人に裏切られて、怒りが止まりません」
セラピスト「それは本当は悲しいのではありませんか」
相談者  「そうかもしれませんね。なんだか涙が出てきました(泣)・・・あれ、泣いたらすっきりしました」

泣けないので怒っている状態だったのが、ちゃんと泣けてすっきりするわけです。よく知られた言葉では「カタルシス」とも呼ばれます。

この感情解放プロセスによって、「怒りが止まりません」というお悩みが解決します。

この例の「最近」も現在に含みます。その理由は後にご理解いただけるでしょう。

「怒りが止まりません」と言われて「それじゃあ、しっかり怒りましょう」ではないところが、アマチュアとの違いです。セラピスト自身が感情解放プロセスを十分に経験していないと、いくら心理学を知っていてもこの支援ができません。

ちなみにKojunの心理セラピーでは、上記の「セラピスト」の役割を半分相談者ご自身でやっていただくことが多いです。強いモチベーションを必要としますが、”治療者”には扱えない奥深いものに触れることができます。

過去の感情解放

もし、人生を変えたいのであれば、反応パターンを変える必要があります。

「立派なことしかしたくない」「すぐにキレる」「恥をかくこと極度におそれる」「劣等感によってチャンスを避ける」「楽をしてはいけない」などの反応パターンです。

これらの繰り返される反応パターンについては、現在の感情解放をしても、また別の出来事をきっかけに同じことが起こります。多くの場合、死期をさとる老齢になるまで続きます。

これを変えるためには、「置き去りにされたもの」を扱う必要があります。すなわち、過去の感情です。

簡単に言うと、子供の頃の感情について思い出してもらいます。

多くの人は、「もうそれは克服したからいいんです」「父が/母が亡くなって、せいせいしました。もうどうでもいいんです」のように言います。

これは現在の自分の台詞。5歳のころの自分がその台詞を言うはずがありません。

また心理ワークに取り組んだとしても、「わたしが5際のころは、こうでしたね」「いま思えば・・・・」という話をしがちです。このような過去形での話し方も5歳の子供が言う台詞ではありません。

「もうどうでもいい」と思っているのは現在の自分であって、5歳の自分が思っていることではありません。

これは「現在ではなく過去を扱う」ということですが、逆説的に「過去形ではなく現在形で語り、今ここで体験せよ」ということでもあります。ですから、過去を扱うことは、まさに「今ここ」重視のワークでもあります。今ここにあるアルバムの中を扱うのです。

子どものころの感情の解放プロセスができたときに、人生のパターンを変えるチャンスが訪れます。

しかし、過去を扱いたくない人は多いです。ですから、「過去を扱わない」と宣伝する心理療法もあります。過去を扱ってお悩みを解決した人たち、人生が変わった人たちはいます。なにを信じるかはご本人次第でしょう。

「子どもの頃の自分は悲しいか?」と尋ねても、「現在の私は悲しくない」と答える。

これが「置き去りにされた自分」です。

多くの人はこんな体験をもっています。「助けてもらえなかった」「かまってもらえなかった」「生きていいよと言っもらなかった」「あなたはあなたでいいよと言ってもらえなかった」など。そして、大人になった自分も、子供の頃の自分に対して同じ態度をとっています。

子供の頃の自分に話しかける心理ワークをしてもらうと・・・・

助けてもらえなかった人は、助けてあげることに躊躇します。

「人目を気にして生きろ」と言われていた人は、「人目を気にしなくていいよ」と言えません。

「子どもの頃の自分は悲しいか?」と尋ねても、「現在の私は悲しくない」と答える。それはかつて周囲の大人がとった態度とそっくりです。その子の気持ちを置き去りにしてしまったのです。悪意があったかどうかは本質ではありません。

当時の感情を認めることを「とりもどす」とも言います。

多くの場合に「もういいんです」「そのことはもう終わったんです」と言って避けたくなります。それが「取り戻せていない」状態です。

つまり、出来事は終わっても、心は「もう終わって」いないのです。

そして、置き去りにされた自分をとりもどして癒したときに、それを守るための反応パターンが役割を終えます。とりもどして癒すことを「リトリート」とも言います。

「立派なことしかしたくない」「すぐにキレる」「恥をかくこと極度におそれる」「劣等感によってチャンスを避ける」「楽をしてはいけない」などの反応パターンは役割を終えて解消します。

ゲシュタルト療法では、現在の問題は、過去に完結していない欲求や感情体験へのとらわれから起きるものと考え、今・ここで、身体感覚や感情に焦点を当てることでっ未完結な欲求や感情に気づき、それをありのままに認め、完結することによって、本来人間に備わっている自己調節機能(ホメオスターシス)や気づきのサイクルが機能するように援助する。

室城 隆之『「生きづらさ」を手放す - 自分らしさを取り戻す再決断療法』p.178

なぜ「過去の感情」が「人生で繰り返されるパターン」と関係しているか

その答えの1つは、「繰り返される」ということは、ずっと昔に始まっていますよね、ということです。

それは強化サイクルとして連なっています。強化サイクルというのは、「人目を気にする」が刷り込まれている人は、人目で恥をかくなどの体験をしがちで、ますます「人目が気になる」ようになるというようなことです。

強化サイクルの中の最近の出来事を扱っても、雑草の先っちょを切るだけで、根は残ってしまいます。

もう1つの答えは、「命がけで身につけた反応が人生を支配する反応パターンになる」ということでしょう。

ホモサピエンスは幼少期に親に見捨てられると死にます。ですので、幼少期の親との関係は命がけの反応パターンを生み出しやすいです。環境に対しても、子供は逃げ場がないので、命がけレベルで「強がる」「人の機嫌をとる」などの反応を身につけます。

命がかかっているわけですから、一生ものの生存戦略としてプログラムされるのでしょう。これは命に関わるようなトラウマ体験が持続的な後遺症を残すことと似ています。

赤ちゃんに「ミルクを‥‥あーげない」と意地悪を繰り返すと、最初は怒ったり泣いたりしますが、やがて楽しそうに笑うようになるそうです。

ですから、大人の自分の「大丈夫です」は役に立たないのです。

では、あなたはどうしたいか?

ここで述べた感情力動アプローチは、世間一般の「早く忘れなよ」というアドバイスとは真逆です。

人生レベルの深い悩みを扱うなら、どこかでこの選択をすることになると思います。

「過去にひきずられないために過去を忘れたい」

それとも

「過去の真実を受け入れて(セラピストではなく自分が)癒すか」

過去の真実を受け入れても大丈夫、むしろ受け入れていないから無意識にひきずっているのだということを知るには、過去の真実を受け入れた人と出会う必要があるでしょう。エピソードを語ってもらう必要はありません、結果だけ見せてもらえば十分です。

過去を忘れるというアプローチには代償が伴います。しかし過去に触れるアプローチには葛藤が伴います。あるいはもっと単純にムリってこともあるでしょう。

そして、もう一つのアプローチなら、思い出していただく必要があります。あなたのお悩みの要望は、どちらでしょうか?

「人生を変えたい」のか、「最近の出来事から抜け出したい」のか。

これもしっかりと選ぶことをお勧めします。すり替えると結果もすり替わります。

人生を変えるための事前練習として最近の出来事の感情解放プロセスをセラピーで扱うことも可能です。しかし、それは事前練習にすぎないことを忘れてはいけません。

※当サイトの記事には実践経験に基づく意見や独自の経験的枠組みが含まれます。また、全てのケースに当てはまるものではありません。ご自身の判断と責任においてご活用ください。

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