軽度の性トラウマの克服を経験した私が、克服のビフォー/アフターを語ってみようと思います。男性の腕力をもつ私ですら、こんなことが起きるのですから不思議です。
※トラウマ反応のある方はお気をつけてお読みください。
※なお、私は一般的な女性の被害体験、克服体験も心理カウンセリングを始める前から聞いていますが、このテーマだけは事例を書きにくく、比較的軽度の自分の体験をもとにします。
しかし、克服した人の話が殆どされないのはなぜでしょうか? よくある誤解に、一生苦しみ続けるとかいうのがあります。(当事者支援団体の方も神話の一つとして挙げていました)専門家も苦しみの解説ばかりで、克服を語ることができません。治療法は語りますが。克服は体験だからでしょう。
「本当は男なんだから平気だろ」「そんなことをされたいから女っぽくしてるんだろ」と言われたり、味方を求めても笑われたりします。被害を受けても社会が被害者とみなしてくれないという状況があり、乱暴な男性からは手を出されやすい面もあります。
性欲による犯行も、愉快犯もいます。
私も男性から強引な扱いを受けたことがあります。力づくで服を脱がされそうになることは数回ありました。子供の頃にもありました。
トラウマ克服前
トラウマを克服する前、すなわちトラウマ状態はこんな感じです。
拒みにくい
無言で身体を触ってくるような男性に対して拒絶の対応が遅れます。
拒絶はで出来るのですが、その対応が一瞬遅れてしまうのです。戦うか、逃げるか、助けを求めるか、そのような選択も鈍くなったように思います。
これは誘われたら違和感を感じながらも断れない、危険な場所に近づきやすいというエピソードとも似ているかと思います。
対応が遅れるので、オーバアクションな拒み方になることもあります。
そして、「こんど身体を触ってくる人が来たら、手首をつかんでひねり上げてやるっ」といつも考えているのですが、いざとなると拒むのが下手です。
不必要に拒む
一方で、「隣に座ってもいいですか?」と話しかけてくるような、フツーに近づきかた、真摯なナンパに対しては、とても冷たい態度で拒絶、撃退してしまうのです。
そして、せっかく勇気を出して誘ってくれた人や、声をかけてくれた優しい人に対して、申し訳ない扱いをしたなあと後で思ったりします。
実は身を守ってるだけ
ところで、実はこれらは、どちらも身の守り方になっているのです。専門家は過剰反応と言うでしょうけど、身を守る反応が過剰なのは当たり前です。
私はこれらの反応を正常だと考えます。
トラウマ克服後
克服後はこんな感じです。
無言で触ってくるような人に対しては、瞬間的に離れたり、止めたりします。まあ、だいたい近づいてきた感じから、反射的に対応します。そもそも、そういう人をあまり近づけません。
反射レベルで自然になりますから、我ながら「速っ」と思います。
一方で、真摯なナンパ君に対しては、まんざらでもなく、「モテる私」を楽しみます。
ちゃっかりお飲み物をおごってもらったりするのも、拒む自信があるからでしょう。
トラウマ状態の理解〜壊れた警報器
克服前の状態(トラウマ状態)のとき、何が起こっていたのでしょうか。
たとえていうなら警報器が機能停止している状態です。鳴らないとか。
PTSD様の症状(侵入症状、過覚醒)については、警報器が鳴りっぱなしと喩える人もいます。どっちにしても警報器が役にたっていないのです。
ただし、精神的な「異常」ではありません。
警報器が機能停止しているので、危険な人が近づいてきても瞬発的な対応ができません。慌てながら「これは危険な状態だ。拒んだほうがいいぞ」と頭で考えてから対処するので、対応が下手だったのです。
一方で、警報器が機能停止しているので、普段から警戒心びんびんです。
別の喩えですが、玄関の鍵が壊れているとおちおち眠れないのと同じ。人が通りかかっただけで、不審者かもしれないと感じます。
紳士なナンパ君が近づいてくると、「あやしいやつ来たーっ」と反応してしまうのです。
警報器が機能停止しているので、常に警戒体制。そのくせ、いざというときの対応が鈍い。
いつも空気と闘っているので、本当の敵が現われたときに闘うことも逃げることもできない。
そんな感じです。喩えですけどね。
その状態を、神経系の状態で説明する専門家もいます。
一般的には暴露(慣らしてゆく)治療が行われますが、私はそれだけでなく、警報器が機能停止するのは、何かを置き去りにしたことと捉えます。
その置き去りにされしものを救出して、再び警報器を通常に取り戻すとき、加害者よりも大きな存在としての自分を取り戻すのだと思います。