クルト・レヴィンという社会心理学者が物理学から取り入れた「場の理論」について、私の実践的解釈を紹介したいと思います。
場作りの「場」
グループワークや会議などで、「場作り」が大切とされます。しかし、なんとなく雰囲気のことと思っている人が多いかも知れません。
また、社風や虐めなども「場」の問題でしょう。
しかし、自分の環境の場を読んで身を守ったり、場を良くするポイントを見つけたりするには、「場が大切だ」というだけではどうしてよいかわかりません。そこで、シンプルなモデルで説明を探求する物理学がどのようにしたのか参考にしてみましょう。
電磁気学の「磁場」から理解する
2つの磁石が引き合ったり反発し合ったりすることは昔から知られていました。
磁石 → 磁石
しかし、それだけでは場理論ではありません。
場理論では、「磁石が磁場を作り、そして磁場が磁石を動かそうとする」と捉えます。
磁石 → 磁場 → 磁石
磁場という物質が発見されたわけではありません。それは心の目で観るものです。
磁場という概念を導入することで、磁石の数が3つ以上になっても現象を捉えることが出来るようになります。
場理論がなければ、要素が増えるたびに新たな理論を構築する必要があり、手に負えないくらい複雑になります。場理論があればこの世の現実を捉えたり、多要素からなる世界をデザインすることが出来ます。
グループワークの例
では社会心理への応用を考えてみましょう。
会議やグループワークでは「Aさんが何を言ったから、Bさんがこんな反応をした」みたいな人と人の作用に目が向きがちです。
参加者 → 参加者
そこではなくて(そこだけではなくて)、参加者たちが作る場に意識を向けます。参加者たちが場を作り(ファシリテーターが参加者たちに場を作らせ)、場が参加者たちを影響します。
参加者たち → 場 → 参加者
また、場の特徴として重ね合わせがあります。「安全安心な場」は、各自が作り出す小さな安心安全が重なって大きな安全安心になる、あるいは補い合うといったところでしょうか。
場の理論を応用すると、参加人数が複数であることをメリットに出来ます。
場の代表的な例としては「安全安心な場」などがあります。
重ね合わせの他の例としては、例えば参加者Bの言葉「クヨクヨしたらあかん」が参加者Aにとってはキツいもノだったとします。しかし、グループの場合に参加者Aが見るのは、気持ちを吐き出している参加者Bとそれを落ち着いて受け止める他の参加者たちという存在の重ね合わせです。「クヨクヨしたらあかん」が受け止められる様子は参加者Aにとってはむしろホッとする体験になるかもしれません。
場を観るコツは「参加者↔参加者」ではないものを見ようとしてみることです。
参加者もまた、場を感じてみるとグループ参加を深められるかも知れません。