プロセスに付き合ってくれるかどうかという観点で心理支援者を探すヒントを書いてみます。
プロセスというのは、たとえばこんな感じです。
衝撃 → 否認 → 感情の混乱 → 受け入れ → 再発見
※プロセスのモデルは諸説あります。
看護などの分野では難病の告知、余命、死別などを扱うため、プロセスの段階を理解して対応することが訓練せれています。
たとえば、ガンを告知された人が「そんなはずない」と言っている段階で、人生の意味を考えてみましょうみたいな話は時期尚早すぎるわけです。
喪失や生死に関する理論が多いですが、葛藤をのり越えて苦しみを手放すトラウマ克服にも多かれ少なかれ似たようなプロセスが含まれています。多くは、心の病をもつことで何かを守っているわけですから、それを手放したり、諦めたりするという、慣れた生き方や慣れた世界の喪失があるわけです。
断捨離も喪失体験を伴う、と言えばわかりやすいでしょうか。
当事者目線でいうと、自分がどの段階にあるかによって必要な心理支援が違うということですね。
心理セラピーなどは、技法によって扱える段階が限られていることが多いです。
衝撃の段階では、具体的に守ってくれる人が必要でしょう。加害者から力で守ってくれるとか、安全な場所に保護してくれるとかですね。ぶっちゃけカウンセラーなんか役に立たないかもです。衝撃の直後では、リラクゼーション技法などを使うでしょう。なんにもしないリトリート合宿みたいなのも近いかと思います。
Kojunのワークショップなんかは、否認から抜け出す準備をしにくる人たちもいます。
Kojunの心理セラピーは、感情の混乱、受け入れ、再発見あたりを体験する人が多いです。もう否認できなくなった人たちですね。初回対面セッションで発作のような感情混乱を出す人も多いです。それが安全に出せる場所を探してきたということでしょう。
そこで、支援者プロセスに付き合ってくれるというのはどういうことでしょうか。
消極的な意味では、その段階に合わない支援を押し付けないということでしょう。時期尚早なことをしないといいますか。
心理セラピーなんかでは「まだそのタイミングじゃないのねー」なんて言われたりします。
積極的な意味では、その段階の必要性を理解してくれるということだと思います。
たとえば否認の段階にいる人に対して、「あの人は未だ否認段階だから」ではなくて、否認という大事な仕事をしているというように捉えてくれる支援者はよさそうです。
それは、そっと放置されるでもなく、一緒になって否認してくれる共感もどきでもなく、揺れの幅を受け止めてもらうというようなことだろうと思います。
否定されないということが大事ですが、なんでも肯定してくれるカウンセリングも癒されないという経験はないでしょうか。
あなたの今の気持ちや状態について、否定せず、表面的に同調するのでもなく、その真の意味に寄り添ってくれる人がよいでしょう。
否認する自分と、否認しない自分がいて、その両方を受け入れてくれる人、つまりそれより大きな矛盾をのみこめている人もよいでしょう。
上記のプロセスで考えるなら、必要な支援者の特徴はこんな感じかもしれません。
・具体的な応急処置をしてくれる人(頼もしい人)
・偽りと真実の矛盾を許す人(善悪を超越した人)
・自分のキャパを超えた感情を受け止めてくれる人(コンテナー)
・新しい意味を発見するヒントとなる先人(サバイバー)
参考文献:
・『グリーフケア』髙橋聡美