大人の虐め被害、過去の虐め被害によるトラウマ

職場の虐め被害、および子供の頃の虐め被害によるトラウマ、すなわち大人のケースについて書いておきたいと思います。

自分原因、他者原因

ひと昔前は、大人が職場で虐められているという場合、「ご自身の中にも原因(虐められやすさ)がある。それを解消しない限り職場を変わっても同じことが繰り返されるでしょう」というようなことを扱うことが多かったように思います。(ご自身に原因があるというのは、ご自身が悪いという意味ではありません。善し悪しと原因は別です)

ですが、現在では、「それは逃げたほうがよさそうですね」というようなことが増えているようです。組織的なカウンセリングルームやクリニックでは弁護士事務所と提携するところもでてきています。加害者に精神的な原因がありそうなケース(悪意がある、パーソナリティの問題をもつ)などです。

自分原因なのか、他者原因なのか、両方なのか、これを見極めてゆく必要があります。そのコツは「仮説として仮説をしっかり持つ」ということです。自分原因かもしれない、他者原因かもしれない、という「かもしれない」を大切にしながら、いまのところこっちだと思う自分を信頼するということです。

自分原因には、自己肯定感(自信なさそう)、愛着不安定や複雑性PTSD(の支配されやすいタイプ)、パーソナリティ機能障害(周囲に不愉快を与える癖など)、発達・特性(空気が読めない、情緒反応が非典型)などがあります。

自分に精神的な問題があるから虐められるのか、虐められているから精神的なトラブルが起きているのか、卵と鶏のようなとらいがたい状況もあります。

現在進行形の問題

他者原因かつ虐めが現在進行形の場合は、心理セラピーよりも法的な支援が必要になる場合があります。

「法テラス」「パワハラホットライン」のような無料相談窓口に、どのような支援があるのか問い合わせておくのもよいかと思います。いますぐ支援を依頼するわけではなくても、いちど連絡をとって感触をつかんでおくということです。法的といっても、相手を裁くためではなく、身を守るためと考えると動きやすいでしょう。

もうひとつは記録をとっておきます。日付と何をされたか、言われたかです。これは恨み日記ではなくて、法的事態に備えるためなので、客観的事実を記録します。

私の方で支援できるのは、虐めの心理メカニズムを学んで心理戦に強くなる方法の伝授があります。しかし、それは多くの場合に根本解決ではありません。

虐めに限らず暴力は力関係が背景にあります。人数、お金(職場から逃げられないのは収入がライフラインになっているから)、社会通念、腕力などの力の差が使われます。「力」(または「弱み」)が何なのかを理解することは重要です。暴力者は力に依存しているので、逆にいうと力に弱い側面があります。その場における上位者(職場なら上司など)がどのようなステータスにあるかによってとるべき方針が異なります。ご自身、暴力者(首謀者)、上位者、心理的な法則について観察する必要があるでしょう。

また、「情報」はあなたの味方になります。ひとりで耐えない/闘わないことも重要です。

参考書籍:『いじめのある世界に生きる君たちへ』中井久夫著,2016(子供向けに書かれていますが、大人にとっても参考になります)

トラウマ的な問題

こちらは私の心理セラピーで問題解消の可能性がある領域です。過去の虐めによって現在の生きづらさが生じているというケースです。

対人的なPTSDとも言えます。

人の心には他者が無許可で入り込めない自治区のようなまのがあり、そこへの侵入を拒む心理的な力を「境界線」といいます。心理セラピーでは、他人が土足で入り込んだために失われた境界線を取り戻すことが多いです。

「ノーと言える力」とも言えますが、表面的にではありません。むしろ表面的に言えないときに、心底で何が起きるかを扱います。

いずれにしても、ご自身を守るための適切かつ正常な反応として生じているのがトラウマであえるとの考えに基づきます。内科学的に病気の原因を取り除くというよりは、そうまでして生き延びたご自身の力への敬意と信頼を回復することになると思います。

※当サイトの記事には実践経験に基づく意見や独自の経験的枠組みが含まれます。また、全てのケースに当てはまるものではありません。ご自身の判断と責任においてご活用ください。

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