トラウマ克服のアフターケアと再決断

心理セラピーに手応えがあったとき、Kojunがよく「その感覚をよく覚えておいてください」と言います。

それはせっかく解消したトラウマに戻ってしまうのを防ぐためです。

※ここに書くのは、権威者による定義・解説の二次情報ではなくて、私の私見です。

再決断はコミット宣言ではない

心理セラピーの終盤で使う技法に再決断というものがあり、新しい態度を宣言してもらうものです。たとえば人の顔色を伺う対人パターンの解消のためのセラピーでは「私はひと目を気にして生きるのはやめます」など。

この場面だけみ見ると、自己啓発のコミット宣言に似て見えるかもしれませんが、全く違います。コミット宣言は宣言によって(あとに引けない状況をつくって)変化を促します。

それに対して心理セラピーで行う再決断は、それが自然に出ることを重視します。変化を促しているのではなくて、変化の確認・補強、すなわちアフターケアとしてしています。

トラウマは危機状況がきっかけで起こります。それが幼少期特有の刷り込みである場合はもはや繰り返されるイメージはないかもしれません。その場合の再決断の目的は、トラウマ(とくに深層禁止令)解消を確認することになります。

大人になってからの出来事によるショックトラウマなどは「もう大人だから大丈夫」がないので、戻ってしまうリスクはいくらかあるでしょう。その場合の再決断の目的は、変化の補強になります。

深層セラピーでも意思を使う

この段階では深層心理のワークは済んでいて、戻るか戻らないかは本人の意思で決めます。

事前の説明で「望んだとおりの結果になりますよ」と注意するのは、「これからもひと目を気にして生きていきます」と決断しようとする人もいるからです。深層心理のワークをやりきっていないと、このようなことが起こります。つまり、確認して失敗を体験するケースです。あらためてトラウマを解消したいのか、したくないのか考えることになります。私のスタンスは人間中心アプローチですので、正しく再決断させるというよりは、なにが起きてるかふまえてご自身の意思で決めていただきます。

変化の補強とは

深層セラピーのワークはやりきっているにもかかわらず、戻ってしまうのは、危機が過去のものだけではない場合です。

その場合は補強が必要です。Lazarusの認知的評価論ふうに言えば、危機に対して恐怖感は2段階で決まります。「その状況イメージが危機である」という認識評価(一次的評価)と「対処可能でない」という認識(二次的評価)です。

たとえばイジメ被害トラウマを解消したとしても、イジメは恐いものです(一次的評価)。それだけではトラウマは再発しません。対処できないという感覚(二次的評価)があるとき、トラウマの可能性がでてきます。

逆に二次的評価をパスできると、好循環に入り、さほど意識しなくても戻る可能性は減ってゆくように思います。

「対処できる」というのは、喧嘩に勝てるとか、平気だとかいう意味ではなく、たとえ恐くても自分が失われないといった感じです。

クライアントがよく使う言葉では「大丈夫」があります。「こわくない」(一次的評価)ではない何かを体験するのです。

ですので、再決断は「イジメなんかこわくない」ではなく「イジメがこわくてもいい」となる場合があるのです。

それが再決断による補強であり、「その感覚をよく覚えておいてください」の言葉です。

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